興除村

興除村（こうじょそん）

興除村は、かつて岡山県児島郡に存在した村で、1971年（昭和46年）に岡山市へ編入され、その歴史を閉じました。現在の岡山市南区興除地域が、その旧 территорияにあたります。

歴史

興除の地は、干拓事業によって生まれました。元禄時代に津田永忠が計画を発案し、享保6年（1721年）には実子の梶坂左四郎が着工するも、漁民との紛争や倉敷村の反対により中断を余儀なくされました。その後も、幕府、岡山藩、児島郡・妹尾村の漁民の間で、干潟の帰属や漁場を巡る対立、さらには備前・備中の国境問題などが複雑に絡み合い、開発はなかなか進展しませんでした。

転機が訪れたのは文政2年（1819年）。幕府の命を受け、岡山藩が開発を行うこととなり、倉敷代官であった大草太郎右馬の監督のもと、文政3年（1820年）に工事が開始されました。児島郡の大庄屋5人が下請けとして参画し、文政6年（1823年）には約840ヘクタール、5096石に及ぶ広大な新田が造成されました。

文政5年（1822年）には、開発中の新田が岡山藩士の小原大之介によって「興除新田」と命名されました。その名は、中国の古典『管子』にある「興利除害」（利益を興し、害を除く）という言葉に由来し、これが興除という地名の起源となりました。同年、興除新田は東村・中村・西村と区分されましたが、当時は新開地に「村」の名称を使用することが認められていなかったため、翌年には東疇・中疇・西疇と改称されました。さらに同年9月には、西疇の北部・東部を分割して曽根が、東疇の西部を分割して内尾が置かれました。1875年（明治8年）には、これら5地区すべてが正式に「村」となりました。

1889年（明治22年）6月1日の町村制施行により、西興除村と東興除村が発足。16年後の1905年（明治38年）4月1日、両村が合併し、興除村が誕生しました。

しかし、平穏な時代ばかりではありませんでした。1957年（昭和32年）8月には、集団赤痢が発生し、40名の患者が出て、うち1名が亡くなるという悲劇に見舞われました。原因は、吉備上水道の滅菌装置が故障し、川水が濾過装置のみを通して給水されていたことにあるのではないかと考えられています。

1967年（昭和42年）には、村議会に広域行政調査特別委員会が設置され、合併に関する調査活動が開始されました。そして1970年（昭和45年）12月23日には、岡山市外3町村合併協議会が設置され、翌1971年（昭和46年）1月11日には第1回合併協議会が開かれました。わずか1ヶ月あまり後の2月15日開催の第4回合併協議会で協議が成立し、協議書に署名が行われました。

沿革

文政3年（1820年）：干拓事業着工。
文政5年（1822年）：岡山藩士小原大之介により開発中の新田を興除新田と命名。東村・中村・西村と区分。
文政6年（1823年）：興除新田が完成。東疇・中疇・西疇・曽根・内尾の5区画に分割。
1875年（明治8年）12月27日：東疇村・中疇村・西疇村・曽根村・内尾村が発足。
1889年（明治22年）6月1日：町村制施行。西疇村と曽根村が合併し西興除村発足。東疇村・中疇村・内尾村が合併して東興除村発足。
1905年（明治38年）4月1日：東興除村と西興除村が合併して興除村発足。合併両村の大字を継承し、役場を中疇に設置。
1910年（明治43年）6月12日：妹尾駅が開業。
1917年（大正6年）6月21日：興除村中疇興除尋常高等小学校の敷地内に岡山県児島郡興除実業学校を開設。
1947年（昭和22年）5月：児島郡興除村藤田村学校組合立興田中学校を開設。
1948年（昭和23年）4月1日：大字西疇のうち字鶴崎の区域を都窪郡茶屋町に編入。
1954年（昭和29年）12月1日：大字西疇のうち字大隅潟の区域を倉敷市に編入。
1967年（昭和42年）6月20日：興除村議会広域行政調査特別委員会設置。
1968年（昭和43年）12月：役場新庁舎が完成。村章制定。
1970年（昭和45年）12月23日：岡山市・上道町・興除村・足守町による岡山市外3町村合併協議会が設立される。
1971年（昭和46年）2月15日：第4回合併協議会で協議が成立、協定書に署名。
1971年（昭和46年）2月22日：3町村議会で合併議案が可決（翌日に岡山市議会で、翌月20日に臨時岡山県議会で合併議案が可決）。
1971年（昭和46年）4月30日：興除村閉村式が興除小学校講堂で開催される。
1971年（昭和46年）5月1日：興除村が岡山市に編入される。同日興除村廃止。村制時の5大字は同市の大字に継承（東疇・中疇・西疇は東畦・中畦・西畦に変更）｡

村章

興除村の村章は、1968年（昭和43年）12月1日に、興除村庁舎新築落成を記念して制定されました。

外周円は「コウジョ」の「コ」の字を図案化したもので、村民の融和団結を表しています。円内の図形は「コウジョ」の「ウ」の字の図案化であり、伸びゆく興除村の飛躍発展を象徴しています。また、興除村の米の花を象徴し、豊年繁栄の意味も込められています。

この村章は、第十回興除文化祭を記念し、「興除」の地名を後世に伝えるため、「興除文化連盟章」に継承制定されました。「興除文化連盟」は、興除村において文化展を開催するなどして、村内芸術の発展に寄与してきた「興除村民芸クラブ」（1966年3月21日結成）が、興除村の岡山市編入に伴って改名された団体です。

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