舞台照明

舞台照明とは

舞台照明は、舞台芸術において不可欠な要素であり、単に舞台を明るく照らすだけでなく、光と影を駆使して空間を演出し、観客の感情を揺さぶる役割を担っています。舞台照明は、照明技術そのものを指すだけでなく、照明に使用する灯具、調光装置、配電設備などの舞台照明設備全般を指します。また、舞台照明に携わる専門家は舞台照明家と呼ばれています。

舞台照明の種類

舞台照明は、設置場所や用途によって様々な種類が存在します。以下に代表的なものを紹介します。

舞台上部の照明

ボーダーライト（BL）
舞台の横幅いっぱいに設置されたライトで、舞台全体を均一に照らすのに使用されます。式典や古典芸能など、フラットな光が必要な場面で活躍します。
サスペンションライト（SUS）
サスバトンと呼ばれる昇降可能な装置に取り付けられたライトで、様々な灯体を吊り下げて使用します。地明かり、ななめ、バック、ネライなど、目的によって使い分けられます。
アッパーホリゾントライト（UH/UHL）
舞台奥のホリゾント幕を上から照らすライトで、カラーフィルターを使用することで多彩な色を表現できます。ホリゾント幕全体を均一に照らすために、ロアーホリゾントライトと併用されることが一般的です。

舞台床面からの照明

フットライト（FL）
舞台前面のへりや花道床面に設置されたライトで、バレエなどで立ち位置の目安として使用されたり、足元を美しく見せる効果があります。
ロアーホリゾントライト（LH/LHL）
舞台後方のホリゾント幕を下から照らすライトで、アッパーホリゾントライトと組み合わせて使用することで、ホリゾント幕全体を均一に照らすことができます。

舞台横からの照明

ステージサイドスポット（SS）
舞台袖に設置されたライトで、人物の顔を明るく照らしたり、大道具や看板を照らすのに使用されます。
トーメンタースポットライト（Tor）
プロセニアムアーチの上部に設置されたライトで、SSの代替として使用されたり、斜めからの光を当てる目的で使用されます。

観客席側からの照明

シーリングライト（CL）
客席天井に設置されたライトで、舞台全体を照らしたり、特定の場所を狙って照らすのに使用されます。
フロントライト（FL）
客席内部の両側に設置されたライトで、CLの補助的な役割で使用されます。夕陽などの表現にも利用されます。
ピンスポットライト（PIN）
演技者を追尾して照らすためのライトで、通常は専門のオペレーターが操作します。

その他の照明

ペンライト
近年では観客が持ったペンライトを考慮した演出も行われている。ソニーでは無線制御により観客が持ったペンライトの発光をコントロールすることで、積極的に舞台照明として活用するFreFlowを開発した。

調光装置

舞台照明では、多数の電気回路を効率的に制御し、明るさを調整するために調光装置が使用されます。調光操作卓と調光器盤が主な構成要素であり、近年ではDMX制御が主流となっています。

灯体の種類

平凸レンズスポットライト
エッジがはっきりとした光を照射できるため、特定の人物や場所を照らすのに適しています。
フレネルレンズスポットライト
エッジがぼやけた、ムラの少ない光を照射できるため、舞台全体を均一に照らすのに適しています。
PARライト
パワフルな光を照射できるため、ライブハウスなどでよく使用されます。
プロファイルスポットライト
ゴボと呼ばれる模様入りの金属板を挿入することで、様々な模様を投影することができます。照射範囲を細かく調整できるカッターも内蔵されています。
フラットライト
レンズがなく、ランプだけのシンプルな構造の灯体です。ホリゾントライトやフットライトなどに使用されます。
* ムービングライト
光の方向や色、模様を自由に変えることができる灯体で、ダイナミックな演出に効果的です。

舞台照明機材のコネクタ

舞台照明機材では、大電力を安全に供給するために、C型コネクタが広く使用されています。電流容量によって20A、30A、60Aのタイプがあります。200V以上の機器ではD型が主流になっています。

舞台照明は、舞台芸術を支える重要な要素であり、照明技術の進化とともに、その表現の幅はますます広がっています。

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