航空宇宙防衛軍団

航空宇宙防衛軍団（Aerospace Defense Command, ADC）

航空宇宙防衛軍団（ADC）は、かつてアメリカ空軍に存在した主要な軍団レベルの組織であり、アメリカ合衆国本土の防空を主な任務としていました。その歴史は、第二次世界大戦後の1946年にまで遡ります。

設立と初期

1946年3月21日、アメリカ陸軍航空軍は本土防空組織として防空軍団（Air Defense Command, ADC）を設立しました。大戦中、本土防空は4つの航空軍によって担われていましたが、ADCの設立により、これら部隊を統括する上級部隊が誕生しました。1947年に空軍が独立すると、ADCも空軍所属となりました。1948年12月1日には、戦闘機・要撃機戦力の大陸航空軍団（CONAC）への統合に伴い、ADCもその指揮下に入りました。

再独立と冷戦期

朝鮮戦争の勃発は、防空と制空任務の兼務が非効率であることを示し、1951年1月1日、ADCは防空部隊として再独立しました。1950年代からは、ソ連の爆撃機を警戒するため、中部カナダ線や遠距離早期警戒線（DEW）などの早期警戒レーダー網が整備され、ADCの管轄下に置かれました。1960年代には、半自動式防空管制組織（SAGE）が実用化され、防空任務がより効率的に行われるようになりました。1958年には、アメリカとカナダの合同組織である北アメリカ航空宇宙防衛司令部（NORAD）が設立され、ADCはその指揮下にも入ることになりました。

技術革新と宇宙への拡張

1950年代には、レーダー搭載のジェット迎撃機が配備され始め、DEWなどの早期探知システム、SAGEやNORADによる効率的な迎撃管制により、有人爆撃機に対する高度な迎撃体制が構築されました。1960年頃からは、弾道ミサイル技術の発展に伴い、その発射の早期探知・警戒もADCの任務に加えられ、弾道ミサイル早期警戒システム（BMEWS）の運用も開始されました。

1968年には、名称に「宇宙」が加えられ、航空宇宙防衛軍団（Aerospace Defense Command, ADC）に改称されました。これは、宇宙空間における脅威への対応を視野に入れたものでした。

解散へ

しかし、ボマーギャップ論によるソ連爆撃機に対する過剰な警戒の反動、ベトナム戦争後の軍縮、そして主要な核攻撃手段が防御の難しい弾道ミサイルへと移行したことなどから、ADCの存在意義は薄れていきました。その結果、ADCの任務と戦力は空軍州兵（ANG）に移管され、一部は戦術航空軍団（TAC）に吸収されることになりました。1979年7月1日に戦術航空軍団防空部（Air Defense, Tactical Air Command ADTAC）が設立され、同年10月1日に部隊が移管されました。そして、1980年3月31日、ADCは書類上でも編成解除され、その歴史に幕を閉じました。

関連項目

防空軍
ソ連防空軍

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