船台

船台（せんだい）とは、船舶の建造や修繕、あるいは陸上での保管を行うために船体を載せる台状の構造物、または船を進水させたり陸上に引き揚げたりするために、海や川といった水域の岸に構築された斜面を指します。

造船方式としての船台

船台は、造船所における主要な船の建造方法の一つとして、乾ドック方式と並び称されます。船台方式では、水辺に作られた傾斜地の上で船体の大部分を組み立てます。船が水に浮かぶことができる段階まで船殻が完成すると、この斜面を利用して船体を水面へ滑り降ろす「進水」が行われます。進水後、船は艤装（ぎそう）と呼ばれる内装や機関、設備などの設置作業を行うための岸壁へと移動され、そこで最終的な完成に至ります。

これに対し、乾ドック方式は、水辺に設けた凹状の施設（ドック）の入口を閉め切って内部の水を排出した状態で船を建造する手法です。建造が完了するとドック内に水を満たして船を浮かべ、入口を開放して水面へ出す、という流れになります。

船台から進水させられる船の重量には技術的な限界があるため、一般的に大型の船舶は乾ドックで建造されます。しかし、過去には船台から進水した非常に大きな船も存在します。例えば、1934年にイギリスで建造された客船クイーン・メリーは進水重量が36,700トンでした。また、日本においては、三菱重工業長崎造船所で1940年に進水した戦艦武蔵が進水重量35,553トンと、これに匹敵する規模で船台から進水した記録があります。

船台の構造

船台はもともと、自然の砂浜をそのまま利用して船の係留や建造を行う場所でした。しかし、十分な潮位変動がない場所や、より大規模な船を扱うためには、人工的に斜面を造成する必要が生じ、現在の船台が建設されるようになりました。一般的に、船台の斜面は10分の1程度（約10%）の勾配がつけられています。底面はプレキャストコンクリートのほか、石材や木材などが使用され、船体をスムーズに滑らせるための工夫が凝らされています。斜面は、船が進水時に完全に水に浮かぶことができるように、ある程度水中まで伸びて構築されています。また、船を水面から引き上げて修理やメンテナンスを行う「上架（じょうか）」のために船台を利用する場合、船体を引き上げるためのウィンチなどの設備が備え付けられることもあります。

船台における進水

船台で建造された船が、自力で水に浮かぶことができる状態になった時点で、いよいよ水面に送り出す進水作業が行われます。この際、船台側に固定された「固定台」と、船体に固定されて進水時に一緒に滑り落ちる「滑走台」という一組の構造物が用いられます。これらを総称して「進水台」と呼びます。

船の建造中は、船体は主に「盤木（ばんぎ）」と呼ばれる支持構造によって支えられています。進水準備が進むにつれて、盤木から進水台へと船体の重量が徐々に移し替えられ、最終的に進水時には船の全重量が進水台によって支えられる状態となります。この状態で船が不用意に滑り出すのを防ぐために、「トリガー」と呼ばれる固定装置が取り付けられています。

固定台と滑走台の間には、滑りを良くするための工夫が施されています。古くは潤滑油が塗られていましたが、第二次世界大戦後に日本の技術開発により、この間に多数の鋼球を敷き詰めて転がすことで抵抗を大幅に減らす手法が実用化されました。

進水式が執り行われると、船を固定していたトリガーが外され、船は滑走台と一緒に固定台の上を勢いよく滑り落ちて水面へと向かいます。水に浮かんだ後、船体から滑走台が取り外され、進水作業は完了となります。

進水の技術的側面と式典

進水の瞬間、船体の一部が先に水に浸かることでその部分に浮力が発生し船体が持ち上がります。一方で、まだ船台上に残っている部分は船台に支持された状態となり、これにより船体には大きな力が作用するため、事前に十分な構造補強が必要となる場合があります。また、斜面を滑り落ちる船体には大きな勢いがつくため、意図した範囲で停止させるためのブレーキ機構も不可欠です。このように、特に巨大な船体を進水させる作業は、複雑な物理現象を制御する必要がある高度な技術を要するものです。

しかしながら、何万トンにも及ぶ巨大な構造物が自重によって水面へ滑り出し、壮大に浮かび上がる光景は、見る者に強い感銘を与えます。この劇的な光景を見せることから、船台からの進水に際しては、一般的に盛大で華やかな進水式が催されます。これに対して、乾ドックでの建造はドック内に水を満たすだけで船が浮かぶため、船台方式のような華やかな式典が行われることは少ないという違いがあります。

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