船江 (伊勢市)

三重県伊勢市船江：歴史と現代が交差する街

船江（ふなえ）は、三重県伊勢市北部に位置する町名で、一丁目から四丁目まであります。かつては勢田川の舟運で栄えた問屋街であり、東洋紡績伊勢工場が立地するなど、伊勢市を代表する地域でした。現在は住宅地が中心ですが、その歴史は深く、様々な変遷を辿ってきました。

地理

船江は伊勢市の中心市街地である山田の北東部に位置し、地域の北部には桧尻川が流れています。桧尻川は勢田川と合流し、かつては北宮川、甫蔵主川、小柳川とも呼ばれていました。船江一丁目には、宮川支流の名残である朧ヶ池があります。

周辺地域との境界は、北は御薗町、東は小木町・田尻町、南は神久・河崎・宮後、西は一之木となっています。

歴史

近世

『光明寺旧記』によれば、船江の古名は「船饗」であり、12世紀にはその名が見られました。『吾妻鏡』には、1181年に熊野山僧兵と平信兼が船江で戦ったという記述があります。『公文抄』では「船江新御園」と記され、伊勢神宮の内宮・外宮双方の支配下にあったことが示唆されています。

江戸時代には、船江町は河崎町とともに山田十二郷に加入し、「山田三方」の配下に置かれました。勢田川沿いの立地から水運に恵まれ、日用品中心の問屋町として繁栄しました。また、参宮客の上陸地としても利用され、賑わいを見せました。

近代以降

明治時代に入ると、陸上交通への転換と水運の衰退により、船江の問屋街は衰退しました。1892年には桧尻川の埋め立てが決議され、川は排水路へと姿を変えました。1874年には船江学校が開校し、後の有緝小学校となりました。

1922年には東洋紡績山田工場が進出し、地域の経済を支えました。工場と省線山田駅（現・JR伊勢市駅）を結ぶ道路（八間道路）が建設され、交通の便が向上しました。しかし、第二次世界大戦の宇治山田空襲で町域の大半が焼失するという被害を受けました。

現代

1966年には住居表示が実施され、船江一丁目から四丁目が誕生しました。1999年に東洋紡績伊勢工場が閉鎖された後、跡地には商業施設「ミタス伊勢」や伊勢赤十字病院が開業し、新たな街の核となっています。

東洋紡績伊勢工場

東洋紡績伊勢工場は、1922年に東洋紡績山田工場として開設されました。戦前には大規模な設備を誇り、地域の経済を牽引しました。しかし、宇治山田空襲で大きな被害を受けました。戦後復興を遂げましたが、1999年に閉鎖されました。

交通

船江の主要道路は、三重県道201号宇治山田港伊勢市停車場線（八間道路）です。また、三重交通の路線バスや、おかげバスが利用できます。

施設

船江には、船江の産土神である船江上社や、臨済宗南禅寺派の瑞泉院があります。

人口の変遷

江戸時代から近代にかけて、船江の人口は変動してきました。近年では、国勢調査によって人口と世帯数が把握されています。

船江の現在

船江は、かつての問屋街の面影を残しつつ、新しい商業施設や病院が立地する、現代的な街へと変貌を遂げています。歴史と現代が交差するこの街は、伊勢市の重要な一部として、その役割を果たし続けています。

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