船越町

船越町（ふなこしちょう）：広島市安芸区の歴史を刻む旧町

船越町は、かつて広島県安芸郡に存在した町で、1975年3月20日に安芸郡矢野町とともに広島市に編入され、その歴史を閉じました。この合併は、1980年4月1日の広島市の政令指定都市昇格前に行われた最後の合併としても知られています。現在は、広島市が政令指定都市となったことで、旧船越町域は全域が安芸区となっています。

船越町の沿革

1889年4月1日の市町村制施行により、船越町域には安芸郡船越村が誕生しました。その後、1928年11月1日に船越村は町制を施行し、船越町となりました。しかし、その歴史は長くは続かず、1975年3月20日に安芸郡矢野町とともに広島市へ編入されることになります。

近隣市町村との関係

船越町は、隣接する海田町との間で、明治時代初頭に瀬野川の改修工事や鴻治新田の境界を巡る争いなど、対立が生じていました。しかし、経済的な結びつきは強く、大正時代には両町合同の商工会が結成され、1939年（昭和14年）には両町合併の機運が高まるなど、密接な関係にありました。1955年（昭和30年）には安芸郡内の9町村での合併が模索されましたが、これは実現しませんでした。その後、農協の合併や消防組合の結成を通じて安芸郡内の結びつきは高まりましたが、最終的には矢野町とともに広島市への編入を選択しました。

経済と産業

農業

『大日本篤農家名鑑』によれば、船越村には「山内豊三郎、白倉義哉、上田榮太郎」といった篤農家がいました。

主要な企業・施設

JSW日本製鋼所広島製作所: 南部（現在の安芸区船越南）に位置し、戦後間もない頃には、日本製鋼所に従事する人々が多く住んでいました。合併前は県内でも最も小さな町でありながら、人口密度は県下一だったとされています。
ロイヤルコーポレーション: 現在の安芸区船越南に所在し、自動車学校などを運営する企業です。広島クレーン学校が1975年、ロイヤルドライビングスクール広島校が広島市合併後の1985年に開校しました。
広島日野自動車: 1945年（昭和20年）11月に新日本自動車として創業。その後、1959年（昭和34年）12月に広島市南区松川町、1985年（昭和60年）11月に安芸郡坂町に移転後、2018年（平成30年）4月に再び安芸区船越に移転しました。
広島市中央卸売市場東部市場: 広島市合併直前の1974年に開場しました。

地理

船越峠: 安芸郡府中町との旧街道の境に位置し、新垰（しんたお）と呼ばれています。旧峠は人が一人通れるほどの道であり、現在の船越峠の南に位置し、戦後の宅地造成でその面影は失われています。
祠（ほこら）: 旧街道沿いの山側に沿って、10箇所あまりの祠があります。これは、旧海岸線であったことを示唆しています。

河川

瀬野川
花都川：岩滝山から流れ出るなだらかな流れと、隣町の海田市の日浦山からの急な流れが合流しています。
的場川

名所・旧跡

岩滝神社
新宮古墳：岩滝山南麓に位置し、6世紀中頃のものとされています。翡翠製勾玉付首飾が出土しており、海田湾周辺の古墳の中でも傑出しています。

地名

花都（はなと）：船越町の東側に位置し、江戸時代に最も華やかな土地でした。
竹浦
引地
荷場（にば）
西
東古谷（ひがしこや）
西古谷（にしこや）
松石新開（含む 鴻治新田）

合併後の状況

広島市への編入後、旧船越町の領域は、町名が船越町、船越一丁目～船越六丁目、船越南一丁目～船越南五丁目となっています。2001年には広島市立安芸区図書館が開館し、2018年には広島日野自動車の本社が安芸郡坂町から移転しました。

その他の情報

元々、3つの豪族（花都の三沢、引地の澤井、西の百田）がいました。
町の花として、たれゆえそう【誰故草】があります。

出身・ゆかりのある人物

檜山袖四郎（広島県議会議長、広島カープ代表取締役）
檜山俊宏（広島県議会議長）
角川博（歌手、タレント）

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