矢野町

矢野町の歴史と地理

矢野町（やのちょう）は、広島県安芸郡に所在した町であり、1975年3月20日には安芸郡の船越町と共に広島市に編入され、その歴史を閉じました。現在、この地は広島市安芸区矢野として知られていますが、周囲は安芸郡に囲まれた独立した地域となっています。矢野はJR呉線の矢野駅を通じて、広島駅からわずか約13分の距離にありながら、他の広島市域と陸続きで接していないため、飛び地のような位置づけになっています。近隣の安芸郡の地域と広島市の合併問題は、未だ進展していない状況です。

矢野町の歴史

矢野の地は、古代から人々が住居を構えていたことが証明されており、縄文時代の遺物も出土しています。特に、矢野小学校の校庭では縄文土器や弥生土器、石斧が発見されています。平安時代には、安芸熊谷氏によって矢野城が築かれ、周囲の地域と共に発展しました。また、この地域は、音戸の瀬戸の航路に近く、港町としても栄えました。

矢野城は1335年、足利尊氏に呼応した武田信武の攻撃を受け、熊谷氏の一族は激しい戦闘の末に敗北しました。その後、1445年に尾張国からやってきた野間重能がこの地に入り、平賀氏や小早川氏との抗争を経て、その勢力を拡大しました。1554年には毛利元就が矢野城を攻撃し、野間氏一族は壊滅的な被害を受けたとされています。

江戸時代に入ると、矢野は漁業や商業の中心地として繁栄し、明治時代には「啓迪舎」が設立され、広島県初の公立小学校へと繋がりました。1903年には矢野駅が開設され、1935年には周辺地域が埋め立てられ、大日本帝国軍の基地が設置されました。しかし、1907年には devastating な土石流が矢野川を襲い、多くの人命と家屋が失われる大惨事を引き起こしました。1945年、広島に原子爆弾が投下された際、矢野地域は黄金山に守られ、直接的な被害はほとんどありませんでした。1975年、ついに矢野は広島市に編入されました。

矢野町の地理

矢野町は矢野川と宮下川の下流部分に位置し、主に平野として発展してきました。周囲の自然にも恵まれており、矢野三山と呼ばれる山々も存在します。具体的には、標高593メートルの絵下山、500メートルの明神山、476メートルの発喜山があり、これらは地域のシンボル的存在です。

また、この町には多くの史跡や名所が点在しています。矢野城は広島県指定の史跡であり、その他にも多家神社や野間神社、愛宕社といった神社があり、それぞれが地域の歴史や文化を今に伝えています。特に、愛宕社は広島市を見下ろす高台に位置し、多くの人々に親しまれる夜景スポットとなっています。

矢野町の祭りと産業

町のイベントとしては、尾崎八幡神社の秋季大祭（通称鬼まつり）が有名です。この祭りには多くの露店が並び、地域の人々が賑やかに訪れます。また、かつて矢野はかもじ（かつら）の産地としても知られ、明治から昭和の初期には400社以上の業者が存在し、全国の生産量の大部分を占めていました。

かつて栄えた矢野町の歴史や文化は、今でも多くの人々に記憶されており、その遺産は地域の誇りとして受け継がれています。

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