良い子の友と少國民の友

戦時下の児童雑誌『良い子の友』と『少國民の友』：統合と休刊までの軌跡

太平洋戦争下の日本において、児童向けの学習雑誌は大きな変革を遂げました。小学館が発行していた学年別の学習雑誌は、戦時統制により統合され、新たな雑誌が誕生します。その代表的なものが『良い子の友』と『少國民の友』です。

それまで小学館は、国民学校（尋常小学校・高等小学校を統合した学校）の学年ごとに異なるタイトルの学習雑誌を発行していました。しかし、1942年2月、戦況の悪化に伴う統制強化により、これらの雑誌は統合されることになります。低学年向けの雑誌が統合され『良い子の友』として、高学年向けの雑誌が統合され『少國民の友』として創刊されました。

『良い子の友』は低学年（国民学校1、2年生相当）を対象とし、より親しみやすい内容で、子どもたちの学習意欲を高めることを目指しました。一方、『少國民の友』は高学年（国民学校3～5年生相当）を対象とし、より高度な内容や、国民としての意識を育むような内容を取り入れていました。

両誌は、戦争という特殊な状況下で発行されていたため、戦争に関する記事や、国民としての責務を強調する内容も含まれていました。しかし、同時に、子どもの心を育むための教育的な内容も大切にされ、物語や絵画、詩など、多様な表現を用いて子どもたちに豊かな学習体験を提供しようと試みていました。

執筆陣には、当時の著名な作家や画家、教育者など、多くの第一線で活躍する人々が参加していました。『良い子の友』には、山根一二三、武井武雄、小松崎茂といった名だたるイラストレーターや作家が名を連ねています。彼らの作品は、戦時下の子供たちの心に温かい光を灯す役割を果たしました。

一方、『少國民の友』には、新美南吉、横山隆一、蕗谷虹児といった、現在でも高い人気を誇る作家やイラストレーターが参加し、高学年の子供たちの知的好奇心と国民意識の醸成に貢献しました。戦争や平和といった重いテーマにも果敢に挑戦し、子どもたちに深い考えを促す記事も掲載されていました。

戦争終結後、1946年には従来の『小学一年生』から『小学六年生』までの学習雑誌が復刊しました。しかし、『良い子の友』は1950年3月、『少國民の友』は1948年11月にそれぞれ休刊となりました。これらの雑誌は、戦時下の日本の教育や出版文化を象徴する存在であり、その歴史は、激動の時代を生き抜いた子供たちの記憶と深く結びついています。

『良い子の友』と『少國民の友』は、わずか数年しか発行されませんでしたが、戦時下の子供たちの教育に大きく貢献した重要な雑誌でした。これらの雑誌が掲載していた内容や、関わった人々の功績を改めて振り返ることで、戦時下の日本の教育や文化についてより深く理解することができるでしょう。また、これらの雑誌は、激動の時代を生き抜いた子供たちの記憶と深く結びついており、歴史的にも貴重な資料となっています。現在、これらの雑誌の資料は、戦後日本少年少女雑誌データベースなどで閲覧することができます。

これらの雑誌は、単なる学習雑誌ではなく、当時の社会状況や国民意識を反映した重要な文化遺産です。現代の私たちがこれらの雑誌を理解することは、過去を学び、未来を考える上で重要な意味を持つと言えるでしょう。

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