花ざかり (村下孝蔵のアルバム)

『花ざかり』 - 村下孝蔵、抒情のアルバム

1984年、シンガーソングライター村下孝蔵によって発表された通算5枚目となるオリジナル・アルバムが『花ざかり』です。彼のキャリアの中盤において制作されたこの作品は、当時の村下孝蔵の音楽性や世界観が色濃く反映されたものとなっています。

アルバムの中核を成すのは、先行してシングルとしてリリースされ、多くの人々に親しまれていた楽曲群です。とりわけ、「少女」や「夢のつづき」といった代表的なヒット曲が収録されており、これらの楽曲がアルバム全体の印象を決定づけています。叙情的で美しいメロディーと、情景豊かな歌詞は、村下孝蔵ならではの魅力と言えるでしょう。

『花ざかり』における特筆すべき点の一つに、「かげふみ」の収録があります。この楽曲は、元々1984年10月1日にシングルとして歌手・高田みづえに提供されたものですが、本作において村下孝蔵自身によるセルフカバーバージョンが収められています。提供した楽曲を自身のアルバムで改めて歌うというスタイルは、彼の作家性と歌い手としての表現力を同時に示すものであり、聴き比べても興味深い一曲です。さらに、「夢のつづき」のシングルB面曲であった「似顔絵」もアルバムに収録されており、シングル発表時のリスナーにとっては馴染み深い楽曲も楽しめます。

本アルバムに収められている楽曲は以下の通りです。

SIDE 1
かげふみ
夢のつづき
北斗七星
似顔絵（シングル「夢のつづき」B面曲）
大安吉日
SIDE 2
少女
女優
手紙
とまりぎ
花ざかりの森

全ての楽曲において、作詞と作曲は村下孝蔵自身が手掛けています。編曲は水谷公生が担当し、楽曲に奥行きと広がりを与えるサウンドを作り上げました。コーラスアレンジは町支寛二が担当し、楽曲の情感を豊かにしています。

アルバムの制作には、当時の日本の音楽シーンを支える多くの実力派ミュージシャンが参加しました。彼らの演奏が、村下孝蔵の紡ぎ出す繊細な楽曲世界を色彩豊かに彩っています。

ドラムス: 高橋伸之、菊地丈夫
ベース: 長岡道夫、岡沢茂
キーボード: 福田裕彦、佐藤準、渋井博、水谷公生
エレクトリックギター: 水谷公生
アコースティックギター: 水谷公生、村下孝蔵
コーラス: 町支寛二
* デュエットボーカル: 伊藤美奈子（「大安吉日」に参加）

発表から時を経ても、このアルバムは多くの音楽ファンに聴き継がれています。1990年には「CD選書」シリーズの一つとして、そして2013年には高音質CDである「Blu-spec CD2」として、それぞれ最新のリマスタリング処理が施され再リリースされました。これにより、よりクリアなサウンドで村下孝蔵の音楽を堪能することが可能となり、新たなリスナーにもその魅力が届けられています。

『花ざかり』は、ヒットシングルを含みつつも、アルバム全体を通して村下孝蔵の揺るぎない音楽スタイルと詩の世界観が表現された作品です。彼のファンにとっては必聴の一枚であり、日本のフォーク・ニューミュージック史における重要な作品の一つと言えるでしょう。

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