花井忠

花井忠

花井忠（はない ただし、1894年12月3日 - 1973年10月5日）は、日本の弁護士、検事総長です。茨城県出身で、従三位、勲一等瑞宝章を受章しています。岳父は、「在野法曹の雄」と称された花井卓蔵であり、その影響を大きく受けました。

生い立ちと学歴

花井忠は、茨城県行方郡麻生町（現在の行方市）で、福田病院院長・福田安次郎の次男として誕生しました。麻生町立尋常小学校、県立水戸中学校、第八高等学校を経て、1919年7月に東京帝国大学法学部（独法兼修）を卒業しました。大学ではドイツ法を学び、その後の弁護士、検察官としての活動に大きな影響を与えました。

弁護士としての活動

1921年7月、花井忠は弁護士名簿に登録し、著名な弁護士であった花井卓蔵の法律事務所に入りました。1925年5月には、花井卓蔵の次女・稲子と結婚し、養子となっています。1929年からは、ベルリン大学、ウィーン大学で刑事学を研究しました。帰国後は、五・一五事件や神兵隊事件など、多くの重要な事件で弁護人を務めました。

特に、1946年8月からは、連合軍最高司令部法律局の嘱託として、東京裁判では広田弘毅元首相の弁護人を務め、無罪論を展開しました。この裁判での弁護活動は、花井忠の弁護士としての才能と信念を示すものでした。

花井忠は、以下の裁判で弁護人を担当しました。

五・一五事件：橘孝三郎、林正三、大川周明
神兵隊事件：中村武彦、片岡俊
ゾルゲ事件：犬養健
極東国際軍事裁判：広田弘毅
丸の内裁判：豊田副武
昭和電工事件
東洋電機カラーテレビ事件
三無事件

検察官としての活動

花井忠は、1953年1月に東京高等検察庁検事長に就任し、官民交流の一環として検察官に転身しました。そして、1957年7月には、民間出身では初となる戦後第3代の検事総長に就任しました。検事総長としての在任中には、検察組織の改革や捜査活動の透明化に尽力しました。彼の検察官としてのキャリアは、弁護士としての経験を活かしたものであり、日本の司法制度に大きな影響を与えました。

大学教授としての活動と晩年

検事総長退官後は、中央大学教授として後進の指導にあたり、法曹界の発展に貢献しました。1965年4月には、勲一等に叙せられ、瑞宝章を賜りました。また、国士舘大学教授も務めました。

花井忠は、1973年10月5日に乖離性大動脈瘤破裂により、東京・神田の自宅で死去しました。従三位に叙せられ、銀杯一組を賜りました。彼の生家は、茨城県指定重要文化財である麻生藩家老屋敷記念館として公開されています。

その他の活動と著書

花井忠は、社団法人国際情勢研究会理事審議委員や第一次臨時行政調査会委員も務めました。また、以下のような著作や関連書籍があります。

星新一著 『きまぐれフレンドシップ Part1花井忠-父とその会社の恩人』
野村二郎著　『検事総長の戦後史』　ビジネス社
花井忠先生追悼録刊行会編 『花井忠』 中央大学出版社 1977年12月刊

花井忠は、弁護士、検察官、そして大学教授として、日本の法曹界に多大な貢献をしました。彼の生涯は、日本の司法制度の歴史において重要な位置を占めています。

関連作品

花井忠をモデルとしたと思われる人物が登場する作品として、以下のものがあります。

落日燃ゆ

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