花咲くアーモンドの木の枝

『花咲くアーモンドの木の枝』について

フィンセント・ファン・ゴッホが1890年に制作した油絵『花咲くアーモンドの木の枝』は、ゴッホが南フランスのサン＝レミ＝ド＝プロヴァンスの精神病院で療養中に、弟テオに息子フィンセント・ウィレムが誕生したことを祝して描かれた作品です。

制作の背景

1890年1月31日、テオと妻ヨーの間に長男が誕生しました。テオは兄に手紙でそのことを知らせ、息子にフィンセントと名付けたいという意向を伝えました。ゴッホは直ちに返事を書き、「今日、吉報を受け取り、言葉で表せないほど嬉しい」と喜びを伝えています。

2月19日、ゴッホは母アンナ宛の手紙で、「その子のために、すぐに青い空を背景に、白い花をつけたアーモンドの木の枝の絵を描き始めました」と報告しています。さらに3月17日頃、テオに宛てた手紙では、「花咲く木の枝のキャンバス」が会心の作であると述べています。

この作品は、4月29日に他の絵とともにテオに送られ、5月3日のテオからの手紙で無事に到着したことが確認されました。ゴッホは、この絵をテオとヨーの寝室に飾ってほしいと願っていましたが、実際にはリビングのピアノの上に飾られることとなりました。

作品の特徴

ゴッホは、新しい生命の誕生を象徴するものとして、アーモンドの木の枝を選びました。南フランスでは2月には早くも花を咲かせるアーモンドの木は、生命の力強さと希望を表現するのにふさわしいモチーフでした。

この作品は、主題の選び方や、はっきりとした輪郭線、そして画面の中での木の配置など、日本の浮世絵から影響を受けていることが指摘されています。また、花の色は当初はピンク色が強かったのですが、経年により光線にさらされて褪色し、より白っぽくなっています。

作品の来歴

この絵は、テオの死後、ヨー、そしてその息子フィンセント・ウィレムへと受け継がれました。現在では、アムステルダムのゴッホ美術館に収蔵されており、多くの人々がその美しい姿を目にすることができます。

ゴッホが描いたその他のアーモンドの絵

ゴッホは、この作品以外にもアーモンドの花をモチーフにした絵をいくつか残しています。これらの作品からも、ゴッホがアーモンドの花に特別な思い入れを持っていたことがうかがえます。

アーモンド以外の花の絵

ゴッホはアーモンドの花以外にも、様々な花を題材とした作品を数多く制作しています。それらの作品を通して、ゴッホの色彩感覚や、花への愛情を感じることができます。

参考文献

二見史郎『ファン・ゴッホ詳伝』みすず書房、2010年。ISBN 978-4-622-07571-4。

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、花咲くアーモンドの木の枝に関するカテゴリがあります。

もう一度検索