花葬

L'Arc〜en〜Ciel シングル「花葬」解説

L'Arc〜en〜Cielの11枚目のシングルとして1998年7月8日にリリースされた「花葬」は、同時発売された「HONEY」「浸食 〜lose control〜」と合わせて、音楽史に残る3枚同時リリースの一枚です。この楽曲は、幻想的で美しさの中に毒が潜むような、壮大な雰囲気が特徴的なミディアムナンバーとして、多くのファンを魅了しました。

楽曲の概要

作曲を担当したkenは、制作時に「夜中に花びらが舞い散る」イメージを持っていたと語っています。また、完成した楽曲の印象については「日本的な濃度が濃い」とも表現しています。この曲は、韓国人ラッパーのHyottoko Jrが「音楽にハマるきっかけとなった」と語るほど、そのメロディの美しさとダークな雰囲気が印象的です。また、日本のロックバンドbetcover!!のボーカル柳瀬は、自身の楽曲で「花葬」の耽美的な歌唱法を参考にしたと述べています。

特筆すべき点として、このシングルには、従来のL'Arc〜en〜Cielのシングルに収録されていた表題曲のインストゥルメンタルバージョンやカップリング曲は収録されていません。表題曲1曲のみのCDシングルは、同時発売の「HONEY」とともに、L'Arc〜en〜Cielにとって初の試みでした。

リリースまでの経緯

3枚同時リリースは、レコード会社のスタッフからの提案がきっかけでした。メンバーのtetsuyaは、この提案に対して「バカっぽくていい」と感じた一方で、3曲分のプロモーションビデオ撮影など、多忙になることへの懸念も示していました。当初、「花葬」は「HONEY」のカップリング曲として制作されていましたが、楽曲の完成度の高さから、3枚同時リリースという形になったのです。

リリースに際しては、全国7都市の街頭ビジョンで大々的に告知が行われました。また、テレビCMでは、指名手配犯が「3枚同時に持ってこい！」と要求するユニークな内容が話題を呼びました。このCMにはプロレスラーの藤原喜明が刑事役で出演しています。2019年には、このCMをセルフリメイクしたバージョンが制作され、公式YouTubeチャンネルの開設に合わせて、3曲のミュージックビデオが期間限定で公開されました。

リリース形態とチャート成績

「花葬」は、通常盤CDの1形態でリリースされました。当初は8cmシングルとして発表されましたが、2006年の再発企画で12cmシングルとして再リリースされています。ジャケットデザインには、「HONEY」のアートワークに写っている人物と同一人物が起用されています。

オリコン週間シングルチャートでは、初登場4位を記録し、初動売上は50万枚を超えました。これはオリコン週間4位の初動としては歴代最高記録です。その後も7週連続でTOP10にランクインし続け、「HONEY」「浸食 〜lose control〜」と合わせて、4週連続3作同時TOP10入りを達成しています。また、L'Arc〜en〜Cielのシングル作品として、通算2作目のミリオンセラーを達成しました。

さらに、発売から約21年後の2019年12月11日には、各種サブスクリプションサービスで全楽曲のストリーミング配信が開始され、Billboard JAPANの楽曲ツイート数チャートで14位にランクインし、初めてTOP100入りを果たしました。

ミュージックビデオ

「花葬」のミュージックビデオは、「浸食 〜lose control〜」の映像監督も務めたHiguchinskyが監督を担当しました。美術には映画『スワロウテイル』の種田陽平が参加し、衣装はデザイナーの船越保孝が担当するなど、豪華なスタッフが集結しました。

hydeは、楽曲の世界観に合わせるため、メンバーやスタッフに相談せず、独断で眉毛を全て剃り落としました。この決断には、ヘアメイク担当の荒木尚子も驚いたそうですが、「剃った方がカッコいい」というhydeの意見を尊重して撮影が進められました。このミュージックビデオは、1999年のクリップ集『CHRONICLE』に初収録され、2019年には公式YouTubeチャンネルで期間限定のCM付きバージョンが公開されました。

収録曲

1. 花葬

楽曲解説

花葬

作詞: hyde / 作曲: ken / 編曲: L'Arc〜en〜Ciel & Hajime Okano

この楽曲は、幻想的で美しい雰囲気の中に、毒が潜むような独特の世界観を持つミディアムナンバーです。作曲を担当したkenは、もともとあった曲をアレンジする中で、全く別のフレーズが生まれたと語っています。この曲のイメージは「夜中に花びらが舞い散っている」様子であり、日本的な要素が強いと感じています。

tetsuyaは、この曲のベースラインを「L'Arc〜en〜Cielの楽曲の中でもすごく気に入っている」とコメントしています。彼のベースプレイは、メロディアスでありながらもダイナミックで、16分音符が細かく散りばめられています。また、空ピッキングも多用することで、独特のリズムを生み出しています。

kenのギタープレイは、ベースラインの上で漂うような透明感のあるサウンドを目指しており、yukihiroのドラムプレイは、シーケンスのようなリズムを意識し、楽曲全体のドラマチックな盛り上がりを支えています。

hydeの歌詞は、kenからの「死をイメージした歌詞をつけてほしい」というリクエストに応え、日本的な死の価値観をテーマに、「死者の世界と生者の世界との境界線があいまいになる瞬間」を描いています。hydeは、歌詞について「和の幻想的な部分と美しい部分で、おどろおどろしさを表現した」と語っています。

2サビ終わりの間奏部分の英語詞は、kenが作詞したもので、まるで「呪文」のようなフレーズが特徴的です。このフレーズは、音源ではhydeが読み上げていますが、ライブではkenが担当しています。

「花葬」は、2012年以降のライブでアコースティックアレンジで披露されることも増えており、ライブビデオの初回限定盤には、2種類のアコースティックバージョンが収録されています。また、yukihiroによるリミックスバージョンや、P'UNK〜EN〜CIELによるセルフカバーも制作されています。

タイアップ

• - テレビ朝日系番組『真相究明!噂のファイル』エンディングテーマ

参加ミュージシャン

• - hyde：Vocal
• - ken：Guitar
• - tetsu：Bass
• - yukihiro：Drum
• - ken：Keyboard & Programming
• - 岡野ハジメ：Keyboard & Programming
• - 斎藤仁：Keyboard & Programming

収録アルバム

• - オリジナルアルバム『ray』 (#1)
• - ベストアルバム『The Best of L'Arc〜en〜Ciel 1998-2000』 (#1)
• - ベストアルバム『QUADRINITY 〜MEMBER'S BEST SELECTIONS〜』 (#1)
• - ベストアルバム『TWENITY 1997-1999』 (#1)

受賞

• - 第13回日本ゴールドディスク大賞 “SONG OF THE YEAR”

「花葬」は、L'Arc〜en〜Cielの音楽性を象徴する重要な楽曲であり、その独特な世界観と高い音楽性は、多くのファンを魅了し続けています。

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