浸食 〜lose control〜

L'Arc〜en〜Ciel 12th Single「浸食 〜lose control〜」

「浸食 〜lose control〜」は、1998年7月8日にリリースされたL'Arc〜en〜Cielの12枚目のシングルです。この楽曲は、同日に発売された「HONEY」「花葬」と合わせて、シングル3枚同時リリースという形で発表されました。発売元はKi/oon Records。

概要

このシングルの表題曲「浸食 〜lose control〜」は、1998年公開の映画『GODZILLA』の挿入歌として使用されました。この楽曲は、レコード会社からの提案で映画のために書き下ろされたもので、メンバー全員がゴジラファンであったため、制作が決定しました。ボーカルのhydeは、楽曲制作に関して「これほど明確な前提があったのは初めてだった」と語っています。作曲はkenが担当し、過去に作成していた音源の断片を基に、変拍子を多用した、静と動が交錯する独特のハードナンバーに仕上げています。

また、カップリングには表題曲のリミックスバージョン「浸食 〜lose control〜 (control experiment mix)」が収録されています。これは、シングルカットする際に、tetsuyaが「1曲だけでは弱い」と提案し、リミックスの収録が決まったものです。当初は海外アーティストにリミックスを依頼する予定もありましたが、最終的にはyukihiroが担当することになりました。

yukihiroはリミックスを担当した理由について、「以前のバンドでもリミックスをしていたし、ラルクの曲でもやりたかった」「歌詞をきちんと使ってくれるなら外国人に頼んでも良いと思ったが、歌詞が分断されるのを避けたかった」と語っています。

このyukihiroによるリミックスが他のメンバーにも好評だったことから、2000年にリリースされたシングル「NEO UNIVERSE／finale」以降の7作品のカップリングに、yukihiroが手がけたリミックスが収録されるようになりました。これらのリミックスは、yukihiroが影響を受けたマンチェスター・ムーブメントを意識し、ハウスやインダストリアルといったダンスミュージックの要素を取り入れたものが多くなっています。

リリース

リリースの経緯

表題曲は、映画『GODZILLA』のサウンドトラック『GODZILLA THE ALBUM』に提供するために制作された楽曲で、「HONEY」「花葬」よりも先に完成していました。当初はサウンドトラックのみに収録される予定でしたが、映画監督の意向により劇中で使用されることになり、急遽シングルカットが決定しました。そして、リミックス版をカップリングとして加えた上で「HONEY」「花葬」との3枚同時リリースに至りました。

ちなみに、このサウンドトラックには、レディオヘッド、フー・ファイターズ、ジャミロクワイといった海外アーティストの楽曲も収録されており、kenは「普段聴いているアーティストと名前が並ぶのが嬉しい」、tetsuyaは「好きなアーティストと一緒にアルバムに収録されるのは光栄」とコメントしています。

3枚同時リリースは、1998年5月13日に全国7都市の街頭ビジョンで告知されました。

リリースプロモーション

リリースプロモーションとして、発売4ヶ月前の1998年3月27日に放送された『ミュージックステーション スペシャル』で「DIVE TO BLUE」とのメドレー形式でテレビ初披露されました。この時はまだ副題の「〜lose control〜」が正式タイトルに付けられていなかったため、「浸食」というタイトルで披露されました。

本作のジャケットでは「浸食」の下に「lose control」と表記されているため、当時はメディアでの曲名表記が曖昧でした。オリコンチャートでは「浸食 lose control」と表記されています。

また、『LOVE LOVE あいしてる』でKinKi Kidsとhydeがコラボレーションした際もこの表記で放送されました。

その後、JASRACの作品データベースや公式サイトなどでは「-」で表記されることが多くなりましたが、近年では「〜」表記も使われるなど、公式でも統一されていない状況です。

本作の発売週には、立てこもり犯が「3枚同時に持ってこい！」と要求するテレビCMが全国放送され、刑事役としてプロレスラーの藤原喜明が出演しました。また、7月10日には『ミュージックステーション』で、崩れた白い柱に血を模した液体を流す演出で楽曲を披露しました。この演出はメンバーにも印象的だったようで、hydeは「普通やらないことをやってもらえて嬉しかった」、kenは「この時間帯にこういう演出をするのが凄いと思った」と語っています。

2019年12月3日には、このテレビCMをセルフリメイクしたCMが公開され、同時に公式YouTubeチャンネルが開設されました。また、「HONEY」「花葬」「浸食 〜lose control〜」のミュージックビデオが期間限定で公開されました。

リリース形態

通常盤（CD）1形態でリリースされ、L'Arc〜en〜Ciel初の12cmシングルとなりました。初回限定仕様はスーパーピクチャーレーベル仕様となっています。

2006年のシングル再発企画でも、スーパーピクチャーレーベル仕様の12cmシングルで再発売されました。ピクチャーレーベルには、オリジナル盤ではジャケットデザイン、再発盤ではメンバーのアーティストフォトが使用されています。

同時発売された「HONEY」「花葬」が8cm盤で、ジャケットの被写体に共通点があるのに対し、本作はサントラからのシングルカットのためか、ジャケットに関連性はありません。

チャート

発売初週のオリコン週間シングルチャートで初登場3位を記録し、初動50万枚以上を売り上げました。これはオリコン週間3位の初動としては歴代最高記録です。

翌週には最高位2位を記録し、その後もTOP10入りを続け、「HONEY」「花葬」を含め4週連続で3作同時TOP10入りを達成しました。

作曲者のkenは、変拍子を多用したこの曲がシングルになることに驚き、「こんなのがチャートに入るわけがない」と思っていたそうです。プロデューサーの岡野ハジメも「変拍子の曲は売れない」と考えていましたが、結果的に大ヒットしました。hydeは、この時期にこのようなマニアックな曲をリリースすることに意義を感じ、「街中に溢れる可能性があるのがカッコいい」と語っています。

フィジカルの累計売上は約93.8万枚と高いセールスを記録しましたが、同時発売された3作の中で唯一ミリオンには届きませんでした。

ミュージックビデオ

ミュージックビデオは、「花葬」の映像監督も担当したHiguchinskyがディレクターを務めました。1999年8月11日発売のクリップ集『CHRONICLE』に初収録されました。

2019年12月3日には、公式YouTubeチャンネルで新たに制作したCMを挟んだバージョンの映像が期間限定で公開され、その後、オリジナルのミュージックビデオが無料公開されました。

収録曲

1. 浸食 〜lose control〜
2. 浸食 〜lose control〜 (control experiment mix)

楽曲解説

浸食 〜lose control〜

作詞: hyde / 作曲: ken / 編曲: L'Arc〜en〜Ciel & Hajime Okano

変拍子を多用した、静と動が交錯するオカルティックなハードナンバーです。映画『GODZILLA』のサントラの依頼がきっかけで制作され、後に挿入歌として起用されました。作曲を担当したkenは、ゴジラをイメージし、過去の音源の断片を基に制作しました。kenは、この曲について「壊れた雰囲気を出したかった。演奏している時の自分が壊れている感じ」と語っています。副題の「lose control」は、kenが断片を作っていた時に頭に浮かんだ言葉で、hydeが作詞する際にそのイメージを伝えました。

曲は、柱時計のような音から始まり、ギターのアルペジオが奏でられますが、サビに向かうにつれノイズが入り、変拍子を連発するハードな曲調へと変化します。kenは、この曲の拍子について「一言では何拍子とは言えない」と語っていますが、主に4/4拍子と7/8拍子が使われています。イントロのアルペジオでは、擦れた音が1音入っており、これは「ディミニッシュにEを入れてぶつけている」とkenは説明しています。

この曲は、2020年2月23日放送の『関ジャム 完全燃SHOW』で、川谷絵音が「名イントロの宝庫」として取り上げました。川谷は、この曲のイントロについて「時計の音が怖い。ギターのアルペジオの最後の1音だけ擦れていて、タイミングも違う。狙っているとは思うが、耳に残る」とコメントしています。

作詞を担当したhydeは、ゴジラという存在を解釈し、「社会的な状況によって理性を失い、本能のみで暴走してしまうような感覚」をテーマに歌詞を書いたと語っています。歌詞の最後には「I died then my instinct was born」というフレーズが繰り返し登場します。当初は歌詞を全て英語にする案もありましたが、hydeは日本語で書く方が気持ちが伝わると判断し、日本語詞になりました。タイトルも日本語にすることを決めていたそうです。

浸食 〜lose control〜 (control experiment mix)

作詞: hyde / 作曲: ken / リミックス: yukihiro

yukihiroによるリミックスバージョンで、L'Arc〜en〜Cielとして初の公式リミックス音源です。yukihiroは「ドラムンベース的だけど、ロックテイストがある」と述べています。このリミックスは、元の音源からボーカル以外はほぼリメイクに近いアレンジとなっており、yukihiroは「テクノの人たちがやるリミックスに近いかもしれない」と語っています。

2000年6月には、リミックスアルバム『ectomorphed works』に別バージョンの「浸食 -lose control- [ectoborn mix]」が収録されました。yukihiroは、このアルバム発売時のインタビューで、本作収録版のリミックスに納得しておらず、アルバム収録にあたりやり直したと語っています。

タイアップ

浸食 〜lose control〜
トライスターピクチャーズ/東宝配給映画『GODZILLA』挿入曲

参加ミュージシャン

hyde：Vocal
ken：Guitar
tetsu：Bass
yukihiro：Drum

浸食 〜lose control〜
ken：Keyboard & Programming
岡野ハジメ：Keyboard & Programming
斎藤仁：Keyboard & Programming
yukihiro：Keyboard & Programming

収録アルバム

オリジナルアルバム
『ray』 (#1)
ベストアルバム
『The Best of L'Arc〜en〜Ciel 1998-2000』 (#1)
リミックスアルバム
『ectomorphed works』 (#2, 別リミックスバージョン)
サウンドトラック
『GODZILLA THE ALBUM』※アジア地域限定発売 (#1)

参考文献

『PATi PATi』、ソニー・マガジンズ、1998年6月号
『R&R NewsMaker』、ビクターエンタテインメント、1998年6月号No.117
『WHAT's IN?』、ソニー・マガジンズ、1998年7月号
『PATi PATi』、ソニー・マガジンズ、1998年7月号
『WHAT's IN? PICTORIAL Vol.7』、ソニー・マガジンズ
『Gb』、ソニー・マガジンズ、1998年8月号
『PATi PATi』、ソニー・マガジンズ、1998年8月号
『uv vol.32』、ソニー・マガジンズ、1998年
『GiGS』、シンコー・ミュージック、1998年12月号
『WHAT's IN?』、ソニー・マガジン、2000年7月号
『音楽プロデューサー 岡野ハジメ エンサイクロペディア CATHARSIS OF MUSIC』、シンコーミュージック・エンタテイメント、2019年

脚注

注釈

出典

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