花音 (漫画)

漫画『花音』の詳細解説

『花音』（かのん）は、さいとうちほによる日本の漫画作品で、『プチコミック』（小学館）にて1995年から連載されました。全6巻の単行本と、全3巻の文庫版が刊行されており、1996年には第42回小学館漫画賞を受賞しています。音楽をテーマにしたこの作品は、主人公の少女、花音が自身の才能と出生の秘密に向き合いながら成長していく姿を描いています。

あらすじ

物語は、モンゴルで育った日本人少女、花音から始まります。彼女は生まれつきバイオリンの才能に恵まれていました。ある日、花音は取材でモンゴルを訪れていた作曲家、河原天童に見出され、日本へと連れてこられます。花音の母親は事故で亡くなる前に、「バイオリンを弾き続ければ、音楽家の父親に会える」と遺しており、その言葉を胸に花音はバイオリニストとしての道を歩み始めます。

花音の才能は、天才指揮者である三神弦の目にも留まり、彼の後押しを受けながら花音は急速に成長していきます。物語が進むにつれて、花音の父親と思われる3人の音楽家の存在が明らかになり、彼女の出生の秘密が物語の軸となっていきます。花音の音楽家としての成長と、父親探しの物語が並行して描かれ、読者を感動へと誘います。

登場人物

林 花音（はやし かのん）
主人公。モンゴルで育ったバイオリンの天才少女。愛器は1759年製ガダニーニ「ケンタウロス」。
三神 弦（みかみ げん）
32歳。天才指揮者で、花音の才能を高く評価し、彼女の成長を支えます。三神財閥の隠し子という一面も持っています。
河原 天童（かわはら てんどう）
作曲家。モンゴルで花音を発見し、日本に連れてきた人物。花音と三神の才能に触れ、自身の才能に葛藤します。
沢 浩基（さわ こうき）
花音の父親候補の一人。バイオリニスト。
梶原 幸生（かじわら さちお）
花音の父親候補の一人。ピアニスト。
ケント・グレゴリー
花音の父親候補の一人。指揮者。
林 由布子（はやし ゆうこ）
花音の母親。カメラマンとして音楽家を撮影していました。花音を身ごもった後、モンゴルに移住し、花音を育てました。

作中に使用・演奏された音楽

作中では、数々のクラシック音楽が重要な役割を果たしています。これらの音楽は、登場人物たちの感情や物語の展開と深く結びついています。

クライスラー：「亜麻色の髪の乙女」
花音が幼少期にモンゴルで聴いていたレコードの一つ。花音は母親からバイオリンを教わった際に、これらのレコードを参考にしていたと語っています。
ビゼー：「ハバネラ」（オペラ『カルメン』より）
日本に来たばかりの花音が、その卓越した技術を披露した際に演奏した曲。
ドボルザーク：「家路」
花音と三神が初めて出会うきっかけとなった曲。花音が事務所の外で演奏していたところを、三神が聞きつけたシーンで使われました。
ワックスマン：「カルメン幻想曲」
花音が初めてオーケストラと共演した曲。この演奏を通じて、彼女はソリストとしての才能を開花させました。
サン＝サーンス：「永遠のロマンス」
沢浩基が演奏した曲。
「アヴェ・マリア」
教会で花音が結婚式のお祝いとして、また自身の気持ちに決別するために演奏した曲です。
チャイコフスキー：「バイオリン協奏曲ニ長調作品35」
ケント・グレゴリーの指揮のもと、花音がソリストとして演奏した曲。物語のクライマックスを彩ります。
サラサーテ：「ツィゴイネルワイゼン」
花音がモンゴルで聴いていたレコード。演奏者は三神であったが、花音はそれを知りませんでした。

書誌情報

さいとうちほ 『花音』 小学館

『花音』は、音楽を愛する人々はもちろん、感動的な人間ドラマを求める読者にもおすすめの作品です。花音の成長と、彼女を取り巻く人々の人間模様が、美しい音楽とともに描かれています。

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