芳香族ポリエーテルケトン

芳香族ポリエーテルケトン（PEK / PEEK）

芳香族ポリエーテルケトンは、エーテルとケトンの結合によって形成される特異な直鎖状ポリマーから成り立つ熱可塑性樹脂のグループを指します。このグループの中で、ポリエーテルエーテルケトン（PEEK）は特に有名で、工業材料として広く用いられています。

特徴と特性

この種のポリマーは、優れた耐熱性を持ち、ガラス転移温度は約143℃とされています。非強化状態のPEKの荷重たわみ温度は約186℃、PEEKは約140℃に達しますが、ガラス繊維などのフィラーを添加した強化グレードにおいては300℃を超える耐熱性を発揮します。また、融点はおよそ343℃と非常に高いため、幅広い温度環境での使用が可能です。熱伝導率は、室温から固相温度までの間、ほぼ直線的に増加します。

さらに、難燃性にも優れており、改良なしでもUL94V-0を満たす特性を持っています。力学的には機械的特性や耐疲労性に優れ、引張強度は90～100MPa、ヤング率は約3.6GPaと高い数値を示します。加工性にも優れ、射出成型やフィルム加工などさまざまな形式で製造が可能です。

種類

芳香族ポリエーテルケトンには、基本的なポリエーテルケトン（PEK）やポリエーテルエーテルケトン（PEEK）の他に、ポリエーテルケトンケトン（PEKK）やポリエーテルエーテルケトンケトン（PEEKK）なども存在します。PEEKは用途を広げており、特に高温環境や機械的強度が要求される分野での利用が進んでいます。さらに、エステル結合を加えたポリエーテルケトンエステルも現在研究されています。

製造方法

芳香族ポリエーテルケトンの製法は大きく分けて5つの方法があります。その中でも実用化されているのは、求核置換反応法と求電子置換反応法の2つです。求核置換法では、PEKやPEEKの合成にベンゾフェノンを使用し、フッ素や水酸基と結合させる手法が取られています。求電子置換法では、アシル基をベンゾフェノンに導入して合成します。両方の方法とも、分岐構造や異種結合が起こることが多く、反応の制御は難しいとされています。

改質と強化

芳香族ポリエーテルケトンには、フィラーを添加して機械的強度を向上させたり、耐熱性を高める改質が行われます。特にPEEK-HTは耐熱性が向上しており、通常のPEEKよりも融点が約34℃、ガラス転移点が約14℃上昇します。さらに、耐衝撃性を改良したグレードも開発されており、幅広い温度範囲での使用に優れた性能を持っています。

用途

PEEKは1978年に開発され、その高い耐熱性や機械的特性から使用範囲が大きく広がっています。例えば、電気・電子関連部品や自動車のエンジン部品、航空宇宙産業での材料部品、さらには薬品製造ラインの部品に至るまで、さまざまな分野で利用されています。

また、高速液体クロマトグラフィー用カラムや医療用インプラント、超高真空用途など、特殊な用途でもその特性が活かされています。さらに、FFF印刷技術でホットエンドとコールドエンドを熱的に分離するためにも使われており、将来的にも多くの新しい用途が期待されています。

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