苑田聡彦
苑田 聡彦（そのだ としひこ）氏は、1945年2月23日に福岡県で生まれました。高校時代は地元三池工業高校で、後に名将となる原貢氏の指導を受けました。一般入試に不合格となった後、定時制課程に入学する際に尽力してくれた原監督への感謝から、原監督の長男である原辰徳氏と幼少期によく遊んだというエピソードも残っています。高校球界屈指のスラッガーとして知られ、「中西二世」とも称されるほど将来を嘱望されていましたが、甲子園の土を踏むことは叶いませんでした。
1964年にプロ入りの道へ進みます。地元の西鉄ライオンズを含む9球団からの獲得オファーがある中、苑田氏が選択したのは、最も提示条件が低かった広島カープでした。この決断の背景には、担当スカウトであった久野久夫氏の熱意ある人柄に強く惹かれたことがあったと語っており、「お金よりも久野さんの熱心さに心が動かされた」と述べています。
プロ入り後は、身長173センチと小柄ながら確かな技術を持っていましたが、精神的な課題から一軍での出場機会を得るのに苦労しました。プロ4年目の1967年、オープン戦で好調を維持しながらも開幕時に二軍行きを命じられ、この悔しさが転機となります。約2ヶ月後に一軍へ昇格すると、6月には山本一義氏の怪我による離脱に伴い、右翼手のレギュラーポジションを獲得。チャンスメーカーとして打線を牽引し、この年は109試合に出場（うち98試合に先発）、規定打席には惜しくも届きませんでしたが、打率.266というキャリア最高の成績を残しました。
ようやく定位置を確立したかに見えた1969年、同期の山本浩二氏が入団したことで、外野手から内野手へのコンバートが求められます。当初は外野で山本氏と競い合いたい気持ちが強く、内野転向を前提とした契約になかなかサインしませんでした。内野守備には当初全く適応できず、当時のコーチであった広岡達朗氏からも「内野手のセンスは皆無。教えても無理だ」とまで言われたほどでした。しかし、広岡氏の粘り強い指導の結果、突然守備の動きが劇的に向上し、内野手としての光明が見出されます。この苑田氏のコンバート成功は、広岡氏にとって指導者としての開眼につながる貴重な経験となったと後に振り返っています。
1969年シーズンは開幕から二塁手、一番打者として起用されますが、不慣れな守備の負担が打撃にも影響し低迷。シーズン半ばには怪我もあり先発から外れますが、10月には二塁手として再びスタメンに名を連ねました。しかし、1970年には国貞泰汎氏が移籍加入したことで、再び出場機会が減少します。
苦境を乗り越え、1972年には三塁手や二塁手として出場機会を増やし、45試合に先発出場。1973年からは上垣内誠氏と併用されながら三塁手として起用されました。そして1974年には打率.300を記録する活躍を見せます。1975年、衣笠祥雄氏が三塁手に転向したことで定位置を失いますが、5月に大下剛史氏が負傷した際に代わって二塁手、一番打者として出場すると、10試合で40打数17安打と大当たり。特に5月17日の大洋ホエールズ戦では先頭打者本塁打を放ち、チームを単独首位に押し上げる立役者となりました。その後も三村敏之氏やシェーン氏の代役を務めるなど、スーパーサブとしてチームを支え、球団史上初のセ・リーグ優勝に大きく貢献。自身にとっても忘れられないシーズンとなりました。同年の阪急ブレーブスとの日本シリーズでも、最終戦に代打で出場しています。
1977年に現役を引退し、球団職員としてスカウトの道へ進みます。主に東日本エリアを担当することになりますが、球団からの「東京でマンション一部屋探しておけ」という突然の指示で始まったスカウト活動は、ほとんど土地勘のない地域でのスタートであり、当初は多大な苦労を経験しました。しかし、その粘り強い活動を通じて、江藤智氏、金本知憲氏、嶋重宣氏、黒田博樹氏、大竹寛氏、永川勝浩氏、會澤翼氏、丸佳浩氏といった、球団の黄金期を支える多くの主力選手たちの獲得に成功しました。
2006年にはスカウト部長に就任。その後スカウト統括部長として、長年にわたりカープの選手育成部門を牽引しました。2024年には統括部長のポストを後進に譲り、スカウト部門の顧問に就任。そして2025年2月に80歳を迎えるのを節目に、野球界から完全に身を引く予定であることを表明しています。
スカウトとしての苑田氏の哲学は「選手に惚れる」こと。気になる選手の試合や練習には足繁く通い、選手としての能力だけでなく人間性もしっかりと見極めて獲得を目指すスタイルは、自身を見出してくれた久野久夫スカウトから受けた影響が大きいと語っています。広島への復帰を決めた黒田博樹氏は、現役時代にこの苑田氏のスカウトとしての熱意ある姿勢に感銘を受けたことが、逆指名の決め手の一つであったとされています。
また、苑田氏は選手としての適性を見抜く観察眼に加え、スカウト自身の適性を見極める能力も持っていました。選手を発掘する能力は経験を積めば身につくとして、むしろ人柄や礼儀正しさこそがスカウトに求められる資質であると考えていました。2024年にスカウト統括部長を引き継いだ白武佳久氏も、選手時代に苑田氏がその人間性を高く評価し、球団に推薦したことで現役引退後にスカウトに就任しています。他にも松本奉文氏、鞘師智也氏、尾形佳紀氏など、多くの後進スカウトが苑田氏によって見出され、球団のスカウト体制を支えています。
現役時代のプレースタイルとしては、パンチ力のある打撃と堅実な守備を特徴とする内野手でした。プロ入り当初は外野手でしたが、1969年に内野手へコンバートされています。
背番号は、1964年から1974年まで「34」、1975年から現役最後の1977年まで「2」を背負いました。
1964年にプロ入りの道へ進みます。地元の西鉄ライオンズを含む9球団からの獲得オファーがある中、苑田氏が選択したのは、最も提示条件が低かった広島カープでした。この決断の背景には、担当スカウトであった久野久夫氏の熱意ある人柄に強く惹かれたことがあったと語っており、「お金よりも久野さんの熱心さに心が動かされた」と述べています。
プロ入り後は、身長173センチと小柄ながら確かな技術を持っていましたが、精神的な課題から一軍での出場機会を得るのに苦労しました。プロ4年目の1967年、オープン戦で好調を維持しながらも開幕時に二軍行きを命じられ、この悔しさが転機となります。約2ヶ月後に一軍へ昇格すると、6月には山本一義氏の怪我による離脱に伴い、右翼手のレギュラーポジションを獲得。チャンスメーカーとして打線を牽引し、この年は109試合に出場（うち98試合に先発）、規定打席には惜しくも届きませんでしたが、打率.266というキャリア最高の成績を残しました。
ようやく定位置を確立したかに見えた1969年、同期の山本浩二氏が入団したことで、外野手から内野手へのコンバートが求められます。当初は外野で山本氏と競い合いたい気持ちが強く、内野転向を前提とした契約になかなかサインしませんでした。内野守備には当初全く適応できず、当時のコーチであった広岡達朗氏からも「内野手のセンスは皆無。教えても無理だ」とまで言われたほどでした。しかし、広岡氏の粘り強い指導の結果、突然守備の動きが劇的に向上し、内野手としての光明が見出されます。この苑田氏のコンバート成功は、広岡氏にとって指導者としての開眼につながる貴重な経験となったと後に振り返っています。
1969年シーズンは開幕から二塁手、一番打者として起用されますが、不慣れな守備の負担が打撃にも影響し低迷。シーズン半ばには怪我もあり先発から外れますが、10月には二塁手として再びスタメンに名を連ねました。しかし、1970年には国貞泰汎氏が移籍加入したことで、再び出場機会が減少します。
苦境を乗り越え、1972年には三塁手や二塁手として出場機会を増やし、45試合に先発出場。1973年からは上垣内誠氏と併用されながら三塁手として起用されました。そして1974年には打率.300を記録する活躍を見せます。1975年、衣笠祥雄氏が三塁手に転向したことで定位置を失いますが、5月に大下剛史氏が負傷した際に代わって二塁手、一番打者として出場すると、10試合で40打数17安打と大当たり。特に5月17日の大洋ホエールズ戦では先頭打者本塁打を放ち、チームを単独首位に押し上げる立役者となりました。その後も三村敏之氏やシェーン氏の代役を務めるなど、スーパーサブとしてチームを支え、球団史上初のセ・リーグ優勝に大きく貢献。自身にとっても忘れられないシーズンとなりました。同年の阪急ブレーブスとの日本シリーズでも、最終戦に代打で出場しています。
1977年に現役を引退し、球団職員としてスカウトの道へ進みます。主に東日本エリアを担当することになりますが、球団からの「東京でマンション一部屋探しておけ」という突然の指示で始まったスカウト活動は、ほとんど土地勘のない地域でのスタートであり、当初は多大な苦労を経験しました。しかし、その粘り強い活動を通じて、江藤智氏、金本知憲氏、嶋重宣氏、黒田博樹氏、大竹寛氏、永川勝浩氏、會澤翼氏、丸佳浩氏といった、球団の黄金期を支える多くの主力選手たちの獲得に成功しました。
2006年にはスカウト部長に就任。その後スカウト統括部長として、長年にわたりカープの選手育成部門を牽引しました。2024年には統括部長のポストを後進に譲り、スカウト部門の顧問に就任。そして2025年2月に80歳を迎えるのを節目に、野球界から完全に身を引く予定であることを表明しています。
スカウトとしての苑田氏の哲学は「選手に惚れる」こと。気になる選手の試合や練習には足繁く通い、選手としての能力だけでなく人間性もしっかりと見極めて獲得を目指すスタイルは、自身を見出してくれた久野久夫スカウトから受けた影響が大きいと語っています。広島への復帰を決めた黒田博樹氏は、現役時代にこの苑田氏のスカウトとしての熱意ある姿勢に感銘を受けたことが、逆指名の決め手の一つであったとされています。
また、苑田氏は選手としての適性を見抜く観察眼に加え、スカウト自身の適性を見極める能力も持っていました。選手を発掘する能力は経験を積めば身につくとして、むしろ人柄や礼儀正しさこそがスカウトに求められる資質であると考えていました。2024年にスカウト統括部長を引き継いだ白武佳久氏も、選手時代に苑田氏がその人間性を高く評価し、球団に推薦したことで現役引退後にスカウトに就任しています。他にも松本奉文氏、鞘師智也氏、尾形佳紀氏など、多くの後進スカウトが苑田氏によって見出され、球団のスカウト体制を支えています。
現役時代のプレースタイルとしては、パンチ力のある打撃と堅実な守備を特徴とする内野手でした。プロ入り当初は外野手でしたが、1969年に内野手へコンバートされています。
背番号は、1964年から1974年まで「34」、1975年から現役最後の1977年まで「2」を背負いました。
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