若い男の肖像 (ラファエロ、ブダペスト国立西洋美術館)

若い男の肖像

『若い男の肖像』（伊: Ritratto di giovane, 英: Portrait of a Young Man）は、イタリアの盛期ルネサンスの名画で、ラファエロ・サンツィオにより1503年から1504年にかけて制作されました。この油彩画は、青年の穏やかな表情と優雅な衣服が特徴的であり、長い髪を持つ男性が穂高の青空を背景に四分の三正面で描かれています。

作品の概要

描かれた男性は赤い帽子をかぶり、穏やかな笑みを浮かべつつ観る者を見つめています。彼の手は欄干に置かれ、右手には紙のような物を握っています。男性の左腕は欄干に隠れており、その姿勢が作品全体に安定感を与えています。背景には湖とそれに通じる道が広がり、穏やかな風景が、明るい青空によって美しく演出されています。

ラファエロのこの作品には、師であるペルジーノの影響が強く見られます。特に、胸像の形式や鑑賞者との関係性を描くための手法、背景の構成などに彼のスタイルが反映されています。また、ペルジーノの作品を参照しつつも、ラファエロ自身の技術が感じられる部分も多くあります。例えば、長髪を持つ男性の顔や身体の描写には解剖学的精度が求められておらず、むしろ絵画的効果が優先されているようです。

制作年代と帰属

本作品の制作年は、ラファエロがフィレンツェに移る直前の1503年から1504年頃であると言われています。ただし、フィレンツェ時代の初期作品と捉える意見もあり、唯一の孤立した研究者によると1508年頃ではないかという説も存在します。

ラファエロのスタイルへの帰属は1844年に美術史家ルイ・ヴィアルドによって公表され、その後ほとんど疑いをもたれていません。興味深いのは、この作品の解剖学的な正確性が欠けている点です。たとえば、男性の頬の広さにムラがあり、長髪でそれを隠すことで自然なバランスが取られています。このような表現は、ラファエロが解剖学的知識から解放され、より絵画的な表現を望んだことを示唆しています。

モデルについて

描かれた男性が誰かについては諸説あります。最も有力とされるのは、詩人で人文主義者のピエトロ・ベンボであり、その意見はルネサンス期の美術史家マルカントニオ・ミキエルの記述に基づいています。しかし、他の候補として、ラファエロ自らや、彼の師ペルジーノ、さらには多くの文人や知人が検討されています。最近では、フェラーラ公爵家の枢機卿イポリット・デステの可能性も浮上しています。

来歴

作品の来歴は不明瞭ですが、エステルハージ家に属する前に、ローマのバルベリーニ家の財産目録にも見られる作品に関連することが指摘されています。

1983年11月、ブダペスト国立西洋美術館からこの肖像と『エステルハージの聖母』を含むイタリア絵画7点が盗まれる事件が発生しましたが、翌年にはすべての作品が発見されました。

まとめ

『若い男の肖像』は、ラファエロの初期作品の一つであり、その優れた構図や描写には彼自身の独創性と技術的な進化が見て取れます。多くの美術愛好家にとって、この作品はまさにルネサンスの美を象徴するものと言えるでしょう。

もう一度検索