若一王子神社

若一王子神社の由緒と歴史

若一王子神社は、長野県大町市大町に鎮座する古社で、かつては県社として、現在は神社本庁の別表神社として崇敬されています。この神社の歴史は、垂仁天皇の時代に仁科王が伊奘冉尊を祀ったことに始まると伝えられています。その後、鎌倉時代に仁科盛遠が熊野那智大社から若一王子を勧請し、仁科荘の鎮守としたことから、「若一の宮」として知られるようになりました。

仁科氏は、後鳥羽上皇に仕えた武士であり、この神社は仁科氏の隆盛とともに発展しました。しかし、仁科氏が武田氏とともに滅亡すると、安曇郡は松本藩の所領となり、若一王子神社も松本藩の庇護を受けることになります。明治時代の神仏分離令により、寺号を廃止し、現在の社名に改称しました。その後、県社への昇格、神社本庁の別表神社への加列を経て、現在に至っています。

神仏習合の遺構

若一王子神社の境内には、神社に見られる鳥居や社殿と、寺院に見られる観音堂や三重塔が並び立っており、神仏習合の姿を今に伝えています。これは、明治維新の際に松本藩による廃仏毀釈の動きに対し、地域の人々が機転を利かせ、神社と寺院の間に土手を築き、両者が別であると主張したため、このような形で残されたとされています。

境内の主要な建物

境内には、歴史的価値の高い建物が数多く存在します。特に重要なものとして、以下のものがあげられます。

本殿（重要文化財）: 弘治2年（1556年）に仁科盛康によって造営されたもので、一間社、隅木入春日造、檜皮葺の美しい建物です。
観音堂（長野県宝）: 宝永3年（1706年）に建立された方三間、寄棟造、茅葺の建物で、正面には一間の向排がついています。内部には、天女や麒麟の彫刻、墨絵の竜、極彩色の花鳥が描かれており、見る者を魅了します。観音堂には、銅造十一面観音坐像御正体残闕（長野県宝）と木造伝十一面観音菩薩立像（大町市有形文化財）が安置されています。
* 三重塔: 宝永8年（1711年）に木食山居の勧進によって建立された三間三面、こけら葺屋根の塔です。階下には五智如来の坐像が祀られており、初層の蟇股には十二支の彫刻が施されています。

その他、拝殿、社務所、護国神社、八坂神社などの建物もあります。

社叢

境内を囲む社叢は、昭和40年に長野県指定天然記念物に指定されており、スギを中心とした針葉樹と広葉樹が混在する豊かな森です。その中にはブナの木も生育しており、神社の歴史を静かに見守っています。

祭事：大町流鏑馬

若一王子神社の祭事の中でも特に有名なのが、例祭（7月17日）と例祭奉祝祭（7月第4日曜日）に行われる「大町流鏑馬」です。これは鎌倉の鶴ケ岡八幡宮、京都の賀茂神社と並び、わが国三大流鏑馬の一つに数えられています。

大町流鏑馬は、平安時代から鎌倉時代にかけてこの地を治めていた仁科氏によって伝えられたとされ、その起源は、承久3年に仁科盛遠が出陣の際に武運を祈って神前に流鏑馬を奉納したことに遡るとされています。特徴的なのは、射手が6歳から9歳くらいの童子であることで、童子は神が憑依した神の子として、足を地につけないように注意が払われます。

童子は狩衣をまとい、太刀を差し、重藤の弓を持ち、箙に矢を差した姿で騎乗し、口取り役やうちわ役などの付き人が付き従い、「ハオー、ハオ、ハオ」の掛け声とともに練り歩く姿は、まるで大名行列のようです。

大町流鏑馬は、昭和46年に大町市の民俗文化財に、平成13年には長野県の指定文化財に指定されています。

交通アクセス

若一王子神社へは、JR大糸線北大町駅から徒歩約10分でアクセスできます。

まとめ

若一王子神社は、その長い歴史と美しい自然、そして神仏習合の文化を今に伝える貴重な場所です。特に大町流鏑馬は、一見の価値があります。ぜひ一度、訪れてみてください。

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