若林玵蔵

若林玵蔵（わかばやし かんぞう）は、安政4年8月2日（1857年9月19日）に武蔵国埼玉郡加須（現在の埼玉県加須市）で生まれ、昭和13年5月3日（1938年）に生涯を閉じました。幼名は銓太郎（せんたろう）といい、明治時代に日本の速記術の発展に大きく貢献した人物です。

生い立ちと速記との出会い

若林は、明治法律学校（現在の明治大学）に入学し、法律を学びました。在学中の明治15年（1882年）に、後の速記術の師となる田鎖綱紀と出会います。田鎖が開いた日本傍聴筆記法講習会は、日本初の速記術を教える場であり、若林はその記念すべき第一期生として参加しました。この出会いが、若林の人生を大きく変えることになります。

速記の実用化への貢献

明治17年（1884年）に明治法律学校を卒業後、若林は埼玉県議会の議事記録作成に携わるようになりました。この経験を通じて、速記術の実用性を確信した若林は、その後、速記術の普及と発展に力を注ぎます。矢野龍渓の著書『経国美談』の後編や、三遊亭圓朝の『怪談牡丹灯籠』などの速記を行い、書籍として出版することにも尽力しました。これらの活動を通して、速記術が広く社会に認知されるようになり、その実用性が高められました。

速記者の育成と議会での活躍

若林は、自ら速記術の指導にもあたり、多くの速記者を育成しました。明治23年（1890年）には、帝国議会における衆議院の常任速記者として採用され、議会の重要な記録を担うことになりました。若林の正確かつ迅速な速記技術は、議会運営に欠かせないものとなり、その功績は高く評価されました。

著書

若林は速記に関する著書も残しており、その一つが『速記法要訣』です。これは、速記術の基本を解説したもので、当時の速記学習者にとって重要な教材となりました。若林の速記術に対する情熱と、その普及への貢献は、後世に語り継がれています。

まとめ

若林玵蔵は、日本の速記術の黎明期を支えた重要な人物です。田鎖綱紀との出会いをきっかけに速記の道に進み、議事録の作成、速記書籍の出版、速記者の育成、議会での活動など、多岐にわたる分野で活躍しました。彼の功績は、現代の速記技術の発展にも繋がっており、その名は後世にまで語り継がれています。

[参考資料]
* わが国初の実用速記者 若林玵蔵(わかばやし かんぞう) - 加須インターネット博物館

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