若者と死

バレエ『若者と死』(Le Jeune Homme et La Mort)の詳細

1946年に初演されたバレエ『若者と死』は、振付家ローラン・プティによって作り上げられた1幕の作品です。ジャン・コクトーの台本を基に、バッハの『パッサカリアとフーガ ハ短調』 BWV 582を音楽として使用しています。この作品は、無情な女性に翻弄される若者が、最終的に死へと導かれる様子を描いています。

舞台装置はジョルジュ・ヴァケヴィッチが手がけ、衣装はバルバラ・カリンスカが担当しました。もともとプティは「若い女」に自身の妻であるジジ・ジャンメールを起用したいと考えていましたが、最終的には若者役にジャン・バビレ、若い女役にナタリー・フィリパールが選ばれました。この作品は1946年6月25日、バレエ・デ・シャンゼリゼで初演されました。

『若者と死』は、その後も多くのバレエ団によって上演され続けており、1951年にはアメリカン・バレエ・シアターでも取り上げられました。さらに1975年には、著名なダンサーであるミハイル・バリシニコフによってリバイバル公演も行われました。この作品はマルセイユ・バレエ団やパリ・オペラ座バレエ団、ボリショイ・バレエ団などでも披露され、日本の牧阿佐美バレヱ団やKバレエカンパニーのレパートリーにも加わるなど、国際的な評価を得ています。

あらすじ

物語はパリの貧しい屋根裏部屋を舞台に展開されます。若者は、待ちわびている女のために屋根裏で待機しています。彼の周りには芸術を志すための画材や絵画が散らばっていますが、彼は決して現れない女に対して苛立ちを募らせていきます。やがてドアが開き、黄色のドレスをまとった女性が現れます。しかし、若者が彼女を抱きしめようと試みると、彼女は冷たくその手を拒否します。

2人の間には次第に緊張感が高まり、若者は女を追いかけますが、彼女は巧みに彼を拒絶します。タバコを咥える女が若者に煙を吹きかけて嘲笑する様子は、彼の切なさをさらに強調します。二人は争い、女は若者を蹴り飛ばします。倒れた若者と女との間で激しくもがき合う中で、女は時に誘い、時に冷酷さを見せて彼を翻弄します。

争いに疲れ果てた若者は絶望し、女に無理やり椅子に座らされます。そこで女は絞首縄を用意し、若者を突き飛ばして去ります。無情な女に背を向けられた若者は、椅子を投げ飛ばして暴れますが、最終的には上にぶら下がる縄を見上げ、自ら命を絶ってしまいます。

彼の死後、舞台の背景は一気にエッフェル塔の見える夜景へと変わります。そこに現れるのは、白いドレスに赤いマントを纏った死神です。彼が若者の許へ手を伸ばすと、不思議な力に導かれるように、若者は縄を外して降りてきます。死神が仮面を外すと、そこに現れたのはなんと彼が翻弄されたあの女でした。女は若者に死の仮面をかけ、指を前方へ伸ばすと、彼は示された方向へと歩みを進めます。

若者が舞台の奥へ進むと、女は再度彼を指し示し、物語は幕を閉じます。この作品は恋愛、死、そして人間の苦悩を巧みに描き出しており、観客に強い印象を残すバレエ作品として評価されています。

もう一度検索