ミハイル・バリシニコフ

ミハイル・ニコラエヴィチ・バリシニコフ

ミハイル・ニコラエヴィチ・バリシニコフ（1948年1月27日生まれ）は、ソ連出身のバレエダンサー、振付家、俳優で、愛称は「ミーシャ」として知られています。彼は1974年にソ連から亡命し、1986年にアメリカ市民権を取得しました。

経歴

バリシニコフはラトビア社会主義共和国のリガに生まれ、両親は共にロシア人です。父はソ連軍の将校で、母は仕立て屋でした。9歳の時に母親の勧めでバレエを始め、ラトビア国立劇場附属バレエ学校に入学。早い段階からバレエ団の公演に参加し、16歳でレニングラードの巡演中にワガノワ・バレエ学校に推薦されることとなりました。

ワガノワ・バレエ学校ではアレクサンドル・プーシキンの指導を受け、1966年にはヴァルナ国際バレエコンクールのジュニア部門で第1位を得ました。1967年に卒業後、キーロフ劇場バレエ団に入団し、その初年度からさまざまなソロ役で頭角を現しました。特に、彼の身体能力と役柄に対する解釈は高く評価されました。その後、1969年にモスクワ国際バレエコンクールで金賞を受賞し、彼の名はさらに広まりました。

1974年、バリシニコフはカナダでの巡演中に失踪し、アメリカに亡命を求めました。その年、アメリカン・バレエ・シアター（ABT）にプリンシパルとして加わると、彼はさまざまな役に挑戦し、その中でも新作ダンスにおける成功が注目されました。特にT・サープ振付の『プッシュ・カムズ・トゥ・ショヴ』は、彼のモダンダンスへの挑戦を象徴しています。

その後、バリシニコフは振付けや演出にも関与し、1977年には自身による『くるみ割り人形』を制作しました。また、1978年にはニューヨーク・シティ・バレエ団に移籍し、振付家ジョージ・バランシンとのコラボレーションに期待が寄せられましたが、残念ながら高齢による健康問題からその実現は難しかったようです。

1980年、再びABTにプリンシパル兼芸術監督として復帰し、以後10年間にわたるその活動の中で、古典作品の再演や新作の創作に取り組みました。新演出での『白鳥の湖』は大きな資金をかけたにもかかわらず、期待された成果を上げられずに終わりました。

1990年から2002年までホワイト・オーク・ダンス・プロジェクトの芸術監督を務めた後、バリシニコフはポスト・モダンダンスに力を注いでいきました。私生活では女優のジェシカ・ラングとの間に娘アレクサンドラを、元バレエダンサーでジャーナリストのリサ・ラインハートとの間には一男二女をもうけています。

近年の活動

2022年2月にロシアがウクライナに侵攻した際、バリシニコフは作家のボリス・アクーニン、経済学者のセルゲイ・グリエフとともに「真のロシア」という団体の発起人となり、ウクライナ難民への支援活動を行っています。また、芸術家や思想家のプラットフォームとしての役割も果たそうとしています。彼はロシアにおける制裁に関しても、芸術家たちに自らの選択を尊重するよう求めています。

映画とテレビのキャリア

バレエだけでなく、バリシニコフは映画やテレビにも出演しています。1977年の映画『愛と喝采の日々』ではアカデミー賞にノミネートされ、人気テレビシリーズ『セックス・アンド・ザ・シティ』では主人公キャリーの恋人役としても知られています。バリシニコフはそのキャリアを通じて、多才な表現者としての地位を確立しました。

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