Kバレエカンパニー

Kバレエ トウキョウ

Kバレエ トウキョウ（K-BALLET TOKYO）は、国際的に活躍したバレエダンサー、熊川哲也が主宰し、芸術監督も兼任する日本のバレエ団です。1999年に設立され、現在は東京都文京区に活動の本拠地を置いています。英国ロイヤル・バレエ団の元総裁であるアンソニー・ダウエル氏が名誉総裁を務めるなど、国内外のバレエ界と強い繋がりを持っています。

沿革

Kバレエ トウキョウの誕生は、1996年の夏にさかのぼります。当時、英国ロイヤル・バレエ団に所属していた熊川哲也氏が、自身の夏期休暇を利用して日本で「Made in London」と銘打ったバレエ公演を行ったのが始まりです。この公演は、当時の同僚ダンサーたちと共に新作と古典の小品を組み合わせた舞台として企画され、1998年まで毎年夏に続けられました。

1998年9月、熊川氏はロイヤル・バレエ団からの退団を表明。それに続いた5名の男性同僚ダンサーと共に、新たなカンパニーの設立へと動き出します。そして1999年1月、熊川氏をリーダーとするこの6名を主要メンバーとして、「Kバレエ カンパニー」の結成が正式に発表されました。設立当初は、彼ら6名に加えてオーディションで選ばれた日本人女性コール・ド・バレエ、さらにロイヤル・バレエ団現役の女性プリンシパルや第一ソリスト数名が客演として加わり、総勢26名でのスタートでした。メンバーの多くがイギリス在住だったため、当初の本拠地はロンドンに置かれ、日本のTBSテレビが招聘する形でビジネスパートナーとして協力しました。この時期は欧州での公演を中心に活動し、日本へのツアーは欧州公演の一部という位置づけでした。初年度は、外部の振付家に委嘱したコンテンポラリー作品や、古典音楽を用いた新作小品を中心に上演し、日本では春と冬にそれぞれ約20日間の巡回公演を行いました。

転機の一つとなったのは、2001年11月に谷桃子バレエ団の協力を得て、初の全幕物『ジゼル』を上演したことです。これ以降、古典の全幕作品を熊川氏自身が再振付・再演出し、ほぼ毎年1作のペースでレパートリーに加えていきました。近年では、完全にオリジナルの物語と振付による新作グランドバレエも積極的に発表しています。そして2002年9月、活動拠点を東京の文京区小石川に移転し、名実ともに日本のバレエ団としての基盤を確立しました。

TBSテレビとのビジネス連携は設立当初から継続され、年に2度の国内ツアーや季節ごとの短期公演などを実施し、安定した興行を続けています。その芸術水準の高さは国内外で評価され、2004年と2006年には『白鳥の湖』『くるみ割り人形』『ドン・キホーテ』といった古典作品の舞台成果が認められ、朝日舞台芸術賞を受賞しました。また、2004年にはニューヨークのメトロポリタン歌劇場で開催されたリンカーン・センター・フェスティバル内の「アシュトン記念公演」に招聘されるなど、国際的な評価も得ています。2012年には、熊川氏がBunkamuraオーチャードホールの芸術監督に就任し、この劇場での新作発表も活発化しました。『シンデレラ』『ラ・バヤデール』『カルメン』などが新たにレパートリーに加えられました。2017年には、熊川氏が構想から手掛けた完全オリジナルの全幕作品『クレオパトラ』を世界初演し、大きな話題を呼びました。この『クレオパトラ』での演出・振付における功績や、これまでの芸術活動全体が評価され、2018年には第59回毎日芸術賞特別賞を受賞しています。同年には、株式会社東急文化村とのフランチャイズ契約も締結し、提携を強化しました。

特徴と運営

Kバレエ トウキョウは、「芸術性において一切妥協しないバレエを創り上げる」ことを創立からの理念としています。その運営形態は日本のバレエ界において非常に特徴的です。日本で唯一、株式会社として運営されるバレエカンパニーであり、ビジネスパートナーであるTBSテレビが公演の興行を担っています。さらに、専属のオーケストラであるシアター・オーケストラ・トーキョーを保有しており、これは日本のバレエ団としては他に類を見ない特徴です。ダンサーの雇用形態についても、欧米のカンパニーに倣ったプロフェッショナルな環境を目指しています。団員は6つの階級に分かれており、上位4階級のダンサーは正規社員または契約社員として、社会保険や厚生年金などが保障されています。これは、チケット販売ノルマがないことや、高価なトウシューズ代が支給されることなどと合わせて、ダンサーが純粋に芸術活動に集中できるような配慮がなされています。組織には、芸術監督補佐やバレエ・ミストレスといった指導的役割に、熊川氏と共にロイヤル・バレエ団で活躍した経験を持つ人材が多く参加しています。設立当初は様々な国籍のダンサーを擁していましたが、2004年頃からは日本人バレエダンサーを積極的に起用するようになり、日本のバレエカンパニーとしてプロフェッショナリズムを確立しています。

人材育成

次世代のダンサー育成にも力を入れており、2013年にはジュニアカンパニー「K-BALLET YOUTH」を設立しました。プロフェッショナルカンパニーと同等の指導や公演環境を提供し、全幕作品を上演する機会を通じて若いダンサーの成長を促しています。熊川氏のこうした人材育成への貢献は評価され、2015年には第24回モンブラン国際文化賞を受賞しました。また、Kバレエは、プロダンサーへの登竜門として世界的に権威のあるスイスのローザンヌ国際バレエコンクールにおいて、2015年よりオフィシャル・パートナー・カンパニーを務めています。

演目

Kバレエ トウキョウのレパートリーは、主に三つの柱で構成されています。第一に、フレデリック・アシュトン、ジョージ・バランシン、ローラン・プティといった海外の著名な振付家によるマスターピース。第二に、古典バレエの全幕作品を熊川氏自身が独自の解釈と演出で再構築した熊川版作品。第三に、物語から音楽、振付まで全てがオリジナルの新作グランドバレエです。熊川氏による新作には、抽象的な作品から古典の再構成、そして全く新しい物語まで幅広い表現があります。主なレパートリーとしては、アシュトン版『ラプソディ』や『二羽の鳩』、バランシン版『セレナーデ』、プティ版『カルメン』などの小品が挙げられます。全幕作品の熊川版としては、『ジゼル』『眠れる森の美女』『白鳥の湖』『くるみ割り人形』『ドン・キホーテ』といった古典名作に加え、『クレオパトラ』『マダム・バタフライ』といった完全オリジナル作品も重要な位置を占めています。

組織構成

カンパニーの組織は、芸術監督である熊川哲也氏を中心に構成されており、井田勝大氏が音楽監督を、浅川紫織氏が副舞踊監督を務めるなど、要職には経験豊富なスタッフが配されています（2022年5月現在）。ダンサーはプリンシパルを最高位とする6段階の階級制を採用しており、荒井祐子氏、中村祥子氏、スチュアート・キャシディ氏、遅沢佑介氏らが名誉プリンシパルとして名を連ねています（2022年7月現在）。

年間約50回の公演を行い、約80名のダンサーを擁するKバレエ トウキョウは、その独自の運営形態と高い芸術性をもって、現代日本のバレエ界において重要な役割を担っています。

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