若者のすべて (映画)

若者のすべて

『若者のすべて』（イタリア語: Rocco e i suoi fratelli、フランス語: Rocco et ses frères）は、1960年に公開されたイタリアとフランスの合作映画で、監督は著名なルキノ・ヴィスコンティです。本作はモノクロ映画で、ビスタサイズ（1.85：1）を採用し、通常版で168分、4K完全修復版では177分の上映時間があります。この映画は、イタリア南部から都会のミラノへと移り住む家族の苦悩と、そこで直面する冷酷な現実を余すところなく描写しています。特に南北イタリアの経済格差に焦点を当て、非常に力強いメッセージを持っています。

映画の背景

映画の原題は「ロッコと彼の兄弟たち」であり、ジョヴァンニ・テストーリの小説『Il ponte della Ghisolfa』に触発された作品です。スーゾ・チェッキ・ダミーコが前作『ベリッシマ』以来、ヴィスコンティとの共同脚本に再び参加し、パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ、マッシモ・フランチオーザ、エンリコ・メディオーリが脚本に関わったことも特徴です。この作品はヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞しており、その評価の高さが伺えます。

ストーリー

物語は、未亡人ロザリア・パロンディと彼女の4人の息子たちが、イタリア南部のバジリカータ州からミラノに移り住むところから始まります。長男ヴィンチェンツォがミラノに住んでいるものの、彼が迎えに来ることはなく、実は婚約者ジネッタとのパーティ中でした。この事態にロザリアは怒り、息子たちと共にパーティを台無しにしてしまいます。

その後、次男シモーネはボクサーとしての道を選び、一時は成功を掴みますが、娼婦ナディアとの関係に堕落してしまいます。三男ロッコはクリーニング店で働いていましたが、シモーネの誤った行動によってクビになり、徴兵されることに。一方、長男ヴィンチェンツォはジネッタと結婚して独立し、末っ子のチーロは学校を卒業し、アルファロメオの技師として働くようになります。

その後のロッコは出所したばかりのナディアと再会し、恋に落ちます。シモーネはロッコの成功を見て嫉妬し、彼らを襲ってナディアに対して暴力を振るいます。ロッコは弟のために身を引きますが、シモーネの生活はどんどん悪化し、借金を抱えることに。ロッコは弟を救うために自らの命をかけ、タイトル戦に挑むことになります。

さらに物語が進むにつれ、ナディアは再び娼婦として生きることに。シモーネは彼女に愛を求めますが、拒絶され、怒りに任せてナディアを殺してしまいます。この事件は兄弟たちの関係に深い影を落とし、ロッコが祝勝会に出るなか、シモーネの犯した罪が発覚します。母親とロッコが彼を庇おうとする中、真面目なチーロは警察に通報し、シモーネは逮捕されます。

結末

映画のラストで、家を出ていたチーロが末っ子ルーカと再会し、都会での生活がどれほど兄弟を変えたかを語ります。チーロは、善良だったシモーネが堕落していった経緯や、ロッコの優しさが逆に彼を追い込んだことに思いを巡らせます。このように、『若者のすべて』は家族や兄弟愛をテーマにした作品であり、彼らの運命は観客に深い感動を与えます。

本作品は、経済的・社会的な背景を通じて人間の感情や選択を丁寧に描写し、視聴者に強いメッセージを送り続けています。そのため、今なお多くの人々に愛される名作となっています。

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