苦難の行軍

苦難の行軍（くなんのこうぐん）

「苦難の行軍」とは、1990年代後半に北朝鮮で発生した飢饉を指す言葉で、1996年の新年共同社説で使われた。当時の経済的困難や飢饉を克服するためのスローガンであり、金日成のパルチザン活動になぞらえている。この飢饉は、1994年から1998年まで続いたもので、金日成の死去と共に始まった。後に、金正日の治世のもとで深刻化した。

歴史的背景

北朝鮮では、金日成の死去後、大規模な飢饉が発生し、最も深刻だったのは1997年である。1995年の大[[洪水]]を発端に、農業生産が大打撃を受け、死亡者は最終的に数百万人に達するとされている。大飢饉の原因には、自然災害の他、農業政策の失敗や経済体制の硬直性も指摘される。特に、「主体農法」と呼ばれる農業政策が、生産性を低下させた要因とされている。

農業政策の失敗

主体農法は、農民の自主性を剥奪し、中央の指揮に依存する形で進められた。金日成は、必要のない傾斜地での農業を奨励し、土留めのない田畑を指示したため、少しの雨でも田んぼは崩壊した。さらに、農業機械の輸入が途絶え、農業は停滞した。これらの政策は、長期間にわたって深刻な農業不振を生む結果となった。商業性も持たないこの農法は、作物の多様性を損ね、農作物の失敗を招いた。

飢饉の影響

飢饉が続く中で、多くの北朝鮮の国民が餓死者となり、栄養失調に苦しむこととなった。統計によると、この時期に死亡した総人数は、30万人から300万人に及ぶとされている。この飢饉の影響を受けた世代は、成長障害や認知障害等の後遺症を残すこととなり、将来的には高い部隊の健康問題を引き起こす要因にもなった。

異常な食糧配給

北朝鮮では、食糧配給制度が存在したが、1995年の水害以降、配給量が激減した。通常であれば一日450gの食糧配分が、飢饉期にはその半分程度にまで抑えられていた。多くの人々が配給に依存し、国家が一般市民に食糧を供給できなくなると、その制度は崩壊に向かっていった。この期間の配給量は、体重や年齢に基づいて厳選され、報告されたものの中にはデータが誇張されているとの指摘も散見される。

国際的反応

世界各国からの食糧援助が、北朝鮮での飢饉を軽減するために行われた。政府は外部からの援助を受け入れましたが、その実施は常に満足に行われたわけではなかった。特に軍事支出に優先的に資金が投入される中、国民の食料問題は長期間放置された。

社会の変容

「苦難の行軍」期間中、北朝鮮の社会は大きく変わり、脱北者の増加が観察されるようになった。生活苦から逃れるため、多くの人々が国を離れ、また国境を越えて出稼ぎをする者も出てきた。これにより、食糧不足は国民感情にも影響を与え、内政への不満が高まる要因ともなった。

粛清と内部的混乱

この時期には、金正日による粛清も行われ、多くの人々が処刑された。失敗した政策の責任を追及する形で、政権内部の信頼も揺らぎ、混乱が生じていった。

現状と教訓

「苦難の行軍」以降、北朝鮮の食糧事情は依然として厳しく、時折飢饉の兆候が見られる。金正恩政権下でも、食糧供給問題は依然として国の大きな課題であり、過去の教訓をもとにした改善策が求められます。飢饉の状況は、政府の政策や国際関係の影響を強く受けており、再発防止へ向けた取り組みが必要です。

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