苫田ダム

苫田ダムの概要

苫田ダム（とまたダム）は、岡山県苫田郡の鏡野町に位置し、吉井川本川の上流部に建設された国土交通省直轄の重力式コンクリートダムです。このダムは、吉井川河口から約90キロメートル遡った地点にあるため、その規模や役割において注目される存在となっています。

建設の背景と目的

苫田ダムは、1945年の枕崎台風や1998年の台風第10号による洪水被害の影響を受け、岡山県内での水不足を解消するために建設されました。このダムは、羽田ダム同様に治水・利水両面に対応した多目的ダムとしての役割を持ち、2005年4月から運用を開始しました。これにより、過去の洪水や渇水の問題を克服することを目的としています。

ダムで形成された人造湖は「奥津湖」と名付けられ、総貯水容量は84,100,000 m³と、岡山県内でも有数の規模を誇ります。大規模なダムの建設は地元住民の反対を招いた経緯もあり、その歴史は地元マスコミでも度々取り上げられました。

技術的特徴

苫田ダムの設計には、国内初のラビリンス型自由越流頂を持つ非常用洪水吐が採用されており、これにより放流水量の増加を実現しています。また、水位を維持するためのゲートとして引張りラジアルゲートが導入されており、見学室からの放流の様子を楽しむことも可能です。これらの技術は、ダムの機能性と安全性を高める要素としています。

治水と利水の役割

治水の面では、苫田ダムは150年に一度の大洪水を想定し、ダムに流入する流量を管理しています。例えば、2006年の大雨では、このダムが下流の水位を低下させ、洪水被害を軽減したとも言われています。

利水においては、岡山県南西部への上水道用水や農地への灌漑用水供給、工業用水の供給に寄与しています。ダムの水を用いることで、2005年6月の渇水時でも取水制限を回避することができました。また、岡山県企業局によって設置された水力発電所は、ダムの運用から得られる水を利用して最大4600kWの発電能力を有しています。

ダムにまつわる歴史

苫田ダムの建設は1953年から始まり、数々の反対運動を経て1999年に工事が着工され、2005年に完成しました。この間、住民との対話や合意形成のプロセスが進められ、最終的には地元の人々への支持も得ることができました。ダム建設は地域に大きな変化をもたらし、建設後に水没した土地の補償や再生の課題も浮上しました。

周辺施設とアクセス

苫田ダム周辺には、浮島橋や苫田大橋、久田大橋が整備されています。浮島橋は離れ小島に架かる人道橋で、室町時代の城跡がある浮島へアクセスすることが可能です。また、苫田大橋はダムの中央を通り、優れた建築デザインによって評価されています。これらの橋は観光スポットとしても注目されています。

結論

苫田ダムは、その治水や利水機能において地域社会に重要な役割を担い、最新技術を活用して安全性を高めています。地元の歴史や文化と合わせることで、今後も地域の発展に寄与する存在であり続けるでしょう。

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