茂ヶ崎横穴墓群

茂ヶ崎横穴墓群

茂ヶ崎横穴墓群（もがさきよこあなぼぐん）は、宮城県仙台市太白区二ツ沢に位置し、7世紀後半から8世紀前半にかけて作られた横穴墓群です。1988年に東北工業大学の二ツ沢キャンパスの造成工事中に発見され、合計25基の横穴墓が確認されましたが、現在ではこれらの墓は存在していません。

立地

茂ヶ崎は大年寺山の古名であり、周辺に位置する大年寺山横穴墓群や二ツ沢横穴墓群と共に、全体を向山横穴墓群と呼ばれることもあります。この墓群は大年寺山の南斜面、小さな谷に面した場所に造営されました。発見された25基の他にも未発見のものが残っている可能性が高いと考えられていますが、現在はこの地域は埋め立てられ、東北工業大学の駐車場に変わってしまったため、元の地形を観察することは困難です。また、この墓群が造られた時期には、南西数キロメートルの位置に陸奥国府である郡山遺跡があり、向山横穴墓群との関係性が指摘されています。

横穴の特徴

茂ヶ崎横穴墓群の発見は重機を用いた工事中であり、多くの墓はすでに崩れていた状態で発見されました。そのため、上部や出口が確認できた例はありません。墓の壁にはノミなどの工具の跡が残されており、玄室、玄門、羨道の三つの構成要素から成っています。

玄室は遺体が安置される部屋で、形状は方形やそれに近い歪な四辺形であることが多く、1辺のサイズは150センチメートルから340センチメートルの範囲です。この部屋には一部の基を除いて、排水のための溝が設けられており、さらに5基には全面または一部分に小石が敷かれています。天井はドーム型またはアーチ型をしており、その高さは100センチメートルから218センチメートルに及ぶことが確認されています。

玄室への入り口部分は羨道よりも狭く、これを玄門と呼びます。その幅は通常60センチメートルから85センチメートルですが、中には40センチメートルや135センチメートルのように幅が異なるケースもあります。高さについては確認が取れているのは数基のみで、83センチメートルから135センチメートルの範囲です。また、玄門には閉塞溝が設けられたものが9基あり、そこには扉が設けられていたと考えられています。

羨道は玄室に続くトンネルで、幅は75センチメートルから170センチメートルの範囲です。高さが確認できているのは2基だけで、95センチメートルと190センチメートルの高さがあり、長さについては不明です。

出土遺物

横穴からは多様な遺物が見つかりました。土器や須恵器、玉器、金属製品の数が発見されており、特に玉類は多種多様です。土器は合計で8点、須恵器は17点見つかり、様々な用途に対応した器が含まれています。また、評価されるべきは群を作る玉です。これには瑪瑙（メノウ）製の勾玉や、碧玉製の管玉、さらにはガラス製の小玉などがあります。特にガラス製小玉は329個と非常に多く、一部には通孔が開けられています。

金属製の装飾品も発見され、銅で鍍金された耳輪や、直刀、刀装具、弓の飾りに用いる金具なども確認されています。

人骨

発掘された3号横穴からは、5体分以上の人骨の断片が出土しました。この中には小児の骨も含まれ、成人の男女と思しき遺体も発見されています。

発掘史

1988年4月5日、二ツ沢キャンパスの造成工事中に横穴と人骨が見つかり、すぐに緊急の調査が開始されました。最初の調査が行われたのは、4月7日から18日までの間で、11基が調査されました。このうちの1つは第2次世界大戦中の防空壕であり、調査が進むにつれて新たな横穴が確認され、合計で14基に達しました。しかし、その後の工事により、先行調査と比較して遺存状態が劣化したものが多く、最終的には発掘調査の後に遺跡は破壊されてしまいました。

このように、茂ヶ崎横穴墓群の発見は、当時の人々の暮らしや葬送の文化を解明する手がかりとなっています。

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