羨道

羨道（えんどう）とは

羨道は、古墳の横穴式[[石室]]や横穴墓といった横穴系の埋葬施設において、玄室と呼ばれる遺体を安置する主室と外部をつなぐ通路部分のことです。この通路は、一般的に「せんどう」とも呼ばれます。羨道の入口は羨門と呼ばれ、多くの場合、閉塞石や扉石によって閉じられていました。羨道は、玄室に比べて幅が狭く、天井も低いことが多いのが特徴です。

構造

羨道は、玄室の形状によっていくつかのタイプに分けられます。玄室が複数ある場合は、羨道に近い順に前室、奥室と区別されます。3つの部屋がある場合は、前室と奥室の間に中室が設けられることもあります。また、羨道が玄室の中央に接続する両袖式、一方に偏って接続する片袖式、そして玄室との境界が不明確な無袖式があります。

起源と役割

羨道の起源は、横穴系埋葬施設の登場と深く関わっています。日本列島における横穴式[[石室]]の初見は、4世紀末葉の北部九州に遡ります。当初、その分布は限定的でしたが、5世紀中葉には九州地方を中心に広がりました。そして、6世紀に入ると近畿地方を中心に全国的に普及しました。

横穴式[[石室]]の構築は、まず墳丘を掘り下げ、玄室と羨道のアウトラインを形成することから始まります。遺体を安置した後、石を積み重ねて天井を設け、最後に封土をします。入口は南向きが多いですが、初期の横穴式[[石室]]には方位に制約されない例も見られます。

横穴系の埋葬施設は、追葬や合葬に適しており、羨道を通じて複数回にわたって埋葬が行われた例が数多くあります。これは、竪穴式石室とは異なる大きな特徴です。また、横穴系埋葬施設の普及は、死生観にも大きな影響を与えました。従来の死者が天空に飛翔する存在であったのに対し、横穴式[[石室]]の出現により、地下に冥界を認める新たな他界観が形成されました。この考え方から、石室には食物や酒などが供えられ、黄泉路の糧とされたと考えられています。

横穴墓との関係

横穴式[[石室]]を持つ古墳の中には、墳丘を伴わない「地下式横穴墓」や「地下式古墳」と呼ばれるものも存在します。これらは主に宮崎県や鹿児島県で見られ、台地の平坦部から水平方向に掘り進めて玄室を設けるという特徴を持ちます。

まとめ

羨道は、単なる通路ではなく、古代の葬送儀礼や死生観を理解する上で重要な要素です。その構造や歴史的変遷を理解することで、古代の人々の暮らしや文化をより深く知ることができます。

ギャラリー

(ギャラリーの画像に関する具体的な記述は、提供された情報からは不明確なため、省略します。)

参考文献

大塚初重・小林三郎『古墳辞典』東京堂出版、1982年
土生田純之「3 横穴系の埋葬施設」石野博信・岩崎卓也・河上邦彦・白[[石太一郎]]編『古墳時代の研究7 古墳I 墳丘と内部構造』雄山閣、1992年
和田萃『大系日本の歴史2 古墳の時代』小学館、1992年
大塚初重・戸沢充則『最新日本考古学辞典』柏書房、1996年
田村晃一・合田芳正『考古学探訪の基礎用語』山川出版社、2000年
土生田純之「古墳の変遷」土生田純之編『日本全国 古墳学入門』学生社、2003年

関連項目

横穴式[[石室]]
羨道墳

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