茂来山

茂来山（もらいさん）

茂来山は、南佐久郡北東部に位置する標高1,718mの山で、信州百名山の一つに数えられています。佐久地域の人々から古くから親しまれてきた名峰であり、その均整の取れた美しい山容は、佐久平のどこからでも目を引きます。

特徴

東西南北に緩やかな裾野を広げた円錐形の山体は、周囲に高い山がないため、1,700m級とは思えないほどの存在感を放っています。山頂からは360度のパノラマが広がり、佐久平を一望できるだけでなく、間近に迫る八ヶ岳連峰の雄大な景色も楽しめます。

地質・地形

茂来山の基盤は秩父古生層で、山体は大日向酸性深成岩によって構成されています。西側は閃雲花崗岩、北縁は角閃石や閃緑岩が中心であり、表層には厚いチャートの岩盤が広がっています。谷の浸食の差が大きく、断層も多いため、地形は険峻です。

植生

標高1,700m級の山でありながら、高山帯や亜高山帯がないにもかかわらず、珍しい植物が数多く生育しているのが特徴です。サンヨウブシが佐久地域で初めて採取されたほか、バイカツツジは佐久地域の他の場所では見られません。また、レンゲショウマの群生地としても知られています。険峻な谷が多いため、原生に近い自然林が多く残されています。

民俗

古くから雨乞いの山として信仰を集めており、田植えの時期に日照りが続くと、山頂に登って雨乞いが行われていました。山頂には、大山の祭神である石尊大権現を祀った石宮があり、1793年（寛政5年）に建立されました。大山は雨降山とも呼ばれ、雨乞いと豊作を願う山岳信仰の対象となっています。石宮は、「茂来山を愛する会」によって定期的に整備されています。

小海町では、1935年（昭和10年）から尋常高等小学校が全校登山を行っており、戦後に一旦廃止されましたが、後に復活しました。

登山

登山ルートは、佐久穂町側から槇沢コースと霧久保沢コース、小海町側から親沢コースの3つがあります。

槇沢コースと霧久保沢コース (佐久穂町側): 国道299号沿いに登山口があります。
親沢コース (小海町側): 親沢地区林道に登山口があります。

見どころ

山頂からの眺望: ほぼ360度のパノラマが広がり、佐久平を一望できます。特に、間近に見る八ヶ岳連峰は圧巻です。
コブ太郎: 佐久穂町側の霧久保沢コースの中腹には、「森の巨人たち百選」に選ばれたトチの巨木（通称「コブ太郎」）があります。

山名

千曲川を挟んで西にそびえる八ヶ岳連峰の硫黄岳の火山噴火の際に、飛んできた岩を「もらった」ことが山名の由来であると言われています。「もらい」が嫁（婿）を「もらい」たいに通じることから、縁結びの山としても知られ、山頂には願掛けの石祠が祀られています。

その他

茂来山は、良質な磁鉄鉱の産地としても知られています。周辺には江戸時代末期に営まれた鉄山やたたら製鉄所の遺跡が残っていますが、鉱脈が断続的で採掘の労力に見合うだけの産出量がなかったため、産業としては確立されませんでした。

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