荊の城

荊の城：サラ・ウォーターズの傑作

『荊の城』（いばらのしろ、原題：Fingersmith）は、2002年にイギリスで発刊されたサラ・ウォーターズによるゴシック犯罪小説です。物語は19世紀ヴィクトリア朝のロンドンを背景に、さまざまな人間関係と複雑な陰謀が展開されます。この作品は、2002年度の「エリス・ピーターズ・ヒストリカル・ダガー賞」を受賞した他、2003年にはラムダ賞のレズビアンフィクション部門でも受賞を果たし、文学界における重要な位置を占める作品となりました。

ストーリーの概要

物語の主人公は、スリの一家に生まれたスーザン（スウ）。彼女は詐欺師であるリチャードから、ある大胆な計画に誘われます。その計画とは、ロンドンから遠く離れたブライア城に住むモードという令嬢をだまし、莫大な財産を奪うというものです。スウはこの計画に乗り、モードの侍女として城で生活を始めます。

ブライア城は外界から隔絶された場所であり、スウとモードは次第に親しい関係へと進展していきます。物語は、彼女たちの絆が深まるにつれて、愛と裏切り、そして真実がどう絡み合うかを描き出します。二人の関係が複雑になる中で、スウは自身の感情と計画との間で葛藤を抱えることになります。

受賞歴と映像化

『荊の城』はその卓越したストーリーテリングとキャラクター描写により、数々の賞を受賞しました。2002年度には「ブッカー賞」や「オレンジ賞」の最終選考候補にも選ばれ、広く評価されています。

この作品は、2005年にBBCによるテレビドラマ化もされ、前後編の形式で放映されました。テレビドラマ版では、サリー・ホーキンスがスーザン役、エレイン・キャシディがモード役を演じました。他にも、ルパート・エヴァンス（リチャード役）やイメルダ・スタウントン（サックスビー夫人役）といった実力派キャストが揃い、映像化された作品としても高い評価を得ました。

さらに、2016年には韓国の監督パク・チャヌクによって『お嬢さん』というタイトルで映画化され、これもまた話題を呼びました。

関連作品

『荊の城』は、同じくサラ・ウォーターズ作の『Tipping the Velvet』などと並び、レズビアン・ゲイ文学の重要な作品とされています。また、映像化された作品も多く、様々な形で人々に感動と驚きを与えています。

この作品は、単なる犯罪小説にとどまらず、心理描写や人間関係の変化に焦点を当てており、読み手に深い感慨を与えるものとなっています。愛、裏切り、そして贖罪のテーマが巧みに絡み合い、一読の価値がある作品です。

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