荒井村 (兵庫県)

荒井村：加古川の三角州に栄えた村の歴史

兵庫県高砂市に含まれる地域、荒井村は、加古川下流域の西岸と法華山谷川の東岸に挟まれた三角州に位置していました。その地名は、荒れた用水路に由来する、あるいは川に洗われる土地を意味する「洗井」から転じたものと考えられています。

明治から昭和初期：水害と産業の歩み

1889年（明治22年）、旧荒井村と松原村が合併して荒井村が誕生しました。当初は加古川の氾濫による水害に悩まされていましたが、1918年から1933年にかけて行われた大規模な河川改修により、水害は大幅に減少しました。

1923年（大正12年）の山陽電気鉄道開業によって村内に荒井駅が開設され、交通の利便性も向上しました。この頃より、荒井村は近代化の波に乗り始めます。

1931年（昭和6年）には、野田醤油（現在のキッコーマン）高砂工場が完成し、その後の産業発展の礎を築きました。続く1939年（昭和14年）には造兵廠播磨製作所、1942年（昭和17年）には田熊汽缶（現在のタクマ）播磨工場が操業を開始するなど、急速な工業化が進みました。戦後も、1947年（昭和22年）には造兵廠播磨製作所跡地に国鉄高砂工場が進出し、1950年（昭和25年）には播磨耐火煉瓦（現在の黒崎播磨）、1953年（昭和28年）には神戸製鋼所といった大企業が進出。荒井村は、工業都市としての発展を遂げていきました。

高砂市への合併：賛否両論を経て

高度経済成長期、荒井村は大きな転換期を迎えます。1954年（昭和29年）、伊保村、高砂町、曽根町との合併により高砂市が誕生したのです。この合併は、荒井村においては賛否が大きく分かれるものでした。しかし、村当局の粘り強い説得活動の結果、村議会で合併が可決され、荒井村は高砂市の一部となりました。新しい高砂市役所は、荒井村内の洗川廃川敷地に建設されました。現在もその場所が、高砂市の行政の中心となっています。

年表

1889年（明治22年）4月1日: 町村制施行により、旧荒井村と小松原村が合併し、荒井村が発足
1954年（昭和29年）7月1日: 高砂町、曽根町、伊保村と合併し、高砂市が発足。同日、荒井村廃止

まとめ

荒井村は、加古川の氾濫という自然災害と、産業発展という近代化という二つの大きな流れに翻弄されながらも、その歴史を刻んできました。水害からの克服、そして工業都市としての発展、そして高砂市への合併。これらの出来事は、現在の高砂市の姿に深く影響を与え、その礎を築いたと言えるでしょう。 荒井村の歴史は、日本の地方都市の近代化の一端を垣間見れる貴重な事例となっています。

参考文献

* 角川書店 編『角川日本地名大辞典 兵庫県』（初版第1刷）、1988年9月。ISBN 978-4040012803。

もう一度検索