荒川車庫前停留場

都電荒川線（東京さくらトラム）の「荒川車庫前停留場」は、東京都荒川区西尾久に位置する停留場です（駅番号：SA 13）。ここは都電の運行を支える荒川電車営業所と荒川車庫が隣接する、いわば都電の中心地の一つと言える場所です。また、地理的には荒川区の最西端かつ最北端にあたる場所でもあります。

歴史

この停留場の歴史は、今から100年以上前の1913年（大正2年）4月1日にさかのぼります。当時この区間を運営していた王子電気軌道が、三ノ輪（現在の三ノ輪橋）と飛鳥山下（現在の梶原）の間を開業させた際に、「船方車庫前」停留場として設けられました。時代は下り、1942年（昭和17年）2月1日、王子電気軌道の事業が東京市に引き継がれることとなり、東京市電（現在の東京都電車）荒川線の一部となりました。この事業譲渡の頃に、現在の名称である「荒川車庫前」に改称されたとされています。以来、この地は都電の車両基地が置かれる場所として、常に路線の中心的な役割を担い続けています。

停留場構造

荒川車庫前停留場は、地上に設けられた相対式ホームを持つ停留場です。合計3つのホームと2つの線路から構成されており、特に特徴的なのは、三ノ輪橋方面へ向かう電車のホームが、降車専用と乗車専用に明確に分かれている点です。

これは、停留場のすぐ隣に荒川電車営業所と車庫があるという立地特性によるものです。

- 降車専用ホーム: 降りた乗客が速やかに駅外や荒川電車営業所へ移動できるよう配置されています。このホームの目の前が荒川電車営業所で、乗務員の交代といった業務が行われています。
- 乗車専用ホーム: こちらから三ノ輪橋方面行きの電車に乗車します。
- 線路配置: 降車専用ホームと乗車専用ホームの間には、荒川車庫への入出庫線が設けられています。車庫から出庫した車両が乗車ホームに入ったり、営業を終えた車両が降車ホーム付近から車庫へ入庫したりする際に使用され、都電運行の効率化に寄与しています。

このような独自のホーム配置は、車両の出入りが頻繁に行われる都電の拠点ならではの光景です。

停留場周辺

停留場の周辺には、都電に関連する施設が集中しています。

- 東京都交通局荒川電車営業所・都電荒川車庫: 都電荒川線の車両の整備や管理、運転士・車掌の詰所など、路線の運行を支える中核施設です。
- 都電おもいで広場: 車庫の一角に設けられた施設で、都電として活躍した歴史的な車両、具体的には5500形と7500形が静態保存・展示されています。通常、土曜日・日曜日・祝日の午前10時から午後4時まで一般公開されており、都電の歩みを感じられる貴重な場所です。
- JR東日本尾久駅: 都電の停留場からは少し歩く距離にありますが、JR高崎線・宇都宮線（東北本線）の尾久駅が利用可能です。都電とJR線の乗り換え地点としても機能します。尾久駅周辺には、JRの尾久車両センターや田端運転所といった鉄道施設も複数見られます。
- その他: 近隣には雄大な隅田川が流れ、自然の景観も楽しめます。また、日本アンテナ本社、日本ばし大増本店、コモディイイダ西尾久店などの企業や商業施設、北区立昭和町図書館、北区立滝野川第五小学校といった公共施設や教育機関も点在しており、地域の生活を支えています。

都電の拠点としての役割

荒川車庫前停留場は、単に乗客が乗り降りするだけでなく、都電荒川線の運行そのものを物理的・機能的に支える非常に重要な拠点としての役割を担っています。車庫や営業所が隣接していること、そしてそれゆえの特徴的なホーム構造は、都電の日常運行を間近で感じさせてくれます。また、都電おもいで広場では、路線の歴史に触れる機会も提供しています。荒川区の地理的な端に位置しつつも、JR尾久駅へのアクセスも可能であり、地域住民の生活に根差した停留場として機能しています。都電荒川線の旅において、その心臓部を見ることができる、興味深い停留場の一つと言えるでしょう。

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