荘司福

荘司福：静謐なる画境

荘司福（1910年-2002年）は、20世紀後半を代表する日本画家の一人です。長野県松本市に生まれ、裁判官であった父の影響で各地を転々とした幼少期を過ごしました。女子美術専門学校（現・女子美術大学）で日本画を学び、巨匠郷倉千靱に師事し、確かな画技を習得しました。

結婚後、数学者の荘司篤と仙台市に移り住み、しばらくは作家活動を休止していました。しかし、夫の篤が結核を患ったことをきっかけに、再び筆を取り、画家としての道を歩み始めます。1941年には第6回東北美術展（現・河北美術展）に出品、その後も精力的に作品を発表し、1946年には院展初入選を果たし、日本美術院研究会員となりました。

その後の荘司は、数々の賞を受賞するなど、日本画壇において重要な存在となります。1951年には日本美術院院友に推挙され、1981年には評議員に就任。代表作である『風化の柵』は1974年に内閣総理大臣賞を受賞するなど、高く評価されました。また、『刻（とき）』は1986年に芸術選奨文部大臣賞を受賞し、その芸術的才能を改めて世に知らしめました。

戦後の荘司は、油彩画の手法を取り入れながら、独自の日本画表現を追求しました。静謐で玄妙な画風は、多くの鑑賞家を魅了しました。東北地方の風景、仏教遺跡、そして自然との調和をテーマにした作品は、彼女の深い精神性と鋭い洞察力を反映しています。晩年まで創作意欲を燃やし続け、インド、ネパール、エジプト、ケニアなど、海外への取材旅行も積極的に行いました。これらの経験は、彼女の作品に新たな奥行きと広がりを与えたと言えるでしょう。

晩年は東京や横浜を拠点に制作活動を続け、2002年、老衰のため92歳でこの世を去りました。没後もその作品は高く評価され続け、秋田県立近代美術館、宮城県美術館、彫刻の森美術館、神奈川県立近代美術館、女子美術大学美術館、東京都現代美術館、東京都美術館、国立美術館、佐藤美術館、韮崎大村美術館など、多くの美術館に収蔵されています。2010年には、母校である女子美術大学より名誉博士号を授与されました。

荘司福の作品は、彼女の生涯と深い精神性を反映した、静謐で奥深い世界観を表現しています。その作品は、見る者に深い感動と静寂を与え、日本の近代日本画史に大きな足跡を残しました。彼女の画業は、後世の日本画家たちにも大きな影響を与え続けています。

主な作品収蔵先:

秋田県立近代美術館
宮城県美術館
彫刻の森美術館
神奈川県立近代美術館
女子美術大学美術館
東京都現代美術館
東京都美術館
国立美術館
佐藤美術館
韮崎大村美術館

参考文献:

* 『荘司福画集』毎日新聞社、1989年

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