荻窪用水

荻窪用水とは

荻窪用水（おぎくぼようすい）は、神奈川県足柄下郡箱根町に源を発し、小[[田原市]]荻窪へと流れる全長約10.3kmの用水路です。早川から取水され、湯本堰や荻窪堰とも呼ばれています。

概要

箱根町湯本（標高約106.3m）にあるローリングダムから取水された水は、大小17個のトンネルと掘割で構成された水路を通ります。小[[田原市]]内の入生田、風祭、板橋、水之尾といった地区を経由し、小[[田原駅]]北部の荻窪地区（標高約95.5m）へと到達します。この用水路は、灌漑用水として利用されるだけでなく、途中の山崎発電所では水力発電にも活用されています。その歴史的価値と土木技術の粋が評価され、2011年には土木学会選奨土木遺産に選ばれました。

成立の経緯

江戸時代、荻窪地区は水田が少ない貧しい村でした。村人たちは水を得て水田を開墾することを強く望んでいました。そんな中、足柄上郡川村（現在の山北町）の農民である川口広蔵が、農閑期に行商で荻窪村に現れます。広蔵は、大工職の経験から土木技術にも明るく、瀬戸堰の建設にも携わったことがありました。村人たちの切実な願いを聞いた広蔵は、早川からの水路開削を決意します。

この事業は、荻窪村だけでなく、水路が通る入生田村、風祭村、板橋村、水之尾村の五ヶ村共同事業として進められることになりました。1782年（天明2年）に工事が開始されますが、難航を極め、事故による犠牲者も出ました。しかし、20年後の1802年（享和2年）にようやく完成し、五ヶ村には合計70町歩もの水田が開墾されました。広蔵は、この献身的な指導により、名主格に引き立てられたと伝えられています。用水は、灌漑だけでなく水車を利用した精米にも活用され、地域住民の生活を支えました。

その後の変遷

1923年（大正12年）の関東大震災により、用水路は大きな被害を受けましたが、その後修復が行われ、1925年6月には復旧しました。しかし、土砂の流入が多く、堰の清掃には多大な労力が費やされていました。また、取水口の堰は蛇籠に玉石を積み上げたものであったため、早川の洪水によって決壊するたびに復旧作業が必要でした。これらの維持管理は、五ヶ村の村民にとって大きな負担となっていました。

このような状況の中、箱根登山鉄道から用水の発電利用の提案がありました。会社が用水路の改修や維持にかかる費用を負担する代わりに、水量の半分以上を発電に利用させてもらうというものです。この提案により、1937年（昭和12年）に山崎発電所が完成。取水口の堰はローリングダムに変わり、水路のトンネルもコンクリートで補強されました。これにより、用水の維持管理は大幅に効率化されました。

1957年（昭和32年）には、荻窪地区に広蔵の功績を称える記念碑が建てられました。現在でも荻窪地区では、彼岸の時期に「広蔵念仏」を唱える習慣が残っています。

山縣水道

1907年（明治40年）には、政治家の山縣有朋が、足柄下郡大窪村板橋に別荘「古稀庵」を構えました。その庭園で使用する水を確保するため、荻窪用水から分水し、古稀庵へ送水する私設水道「山縣水道」が建設されました。

めだかの学校

童謡『めだかの学校』は、童話作家の茶木滋が荻窪用水をモデルに作詞したとされています。1996年（平成8年）には、小[[田原市]]が荻窪地区の用水路の脇に憩いの場として「めだかの学校」を開校し、メダカが放流されています。

まとめ

荻窪用水は、地域住民の切実な願いから開削された歴史ある用水路です。灌漑用水や水力発電に利用され、地域社会の発展に大きく貢献しました。また、その歴史的価値から土木遺産に選定され、今もなお、地域住民の生活を支えています。

参考文献

中野敬次郎『小田原近代百年史』形成社、1968年。
小[[田原市]]教育研究所『わたしたちの小田原』小[[田原市]]教育研究所、1994年。

関連項目

疏水百選

外部リンク

疏水名鑑-荻窪用水-

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