荼枳尼天

荼枳尼天について

荼枳尼天（だきにてん）は、日本の仏教において特有の位置を占める神であり、その起源はインドのダーキニーにさかのぼります。ダーキニーはもともと集団や種族を指す名であるが、日本では一つの尊格を示し、彼女の姿は一般的に白狐に乗る女天女として表現されています。この神は狐の精とされ、稲荷権現や飯綱権現とも関連づけられ、特に「辰狐王菩薩」とも呼ばれています。

起源

荼枳尼天の起源にあたるインドのダーキニーは、裸身で虚空を駆け、人肉を食べる魔女として知られていました。ヒンドゥー教やベンガル地方の土着信仰に由来する彼女は、後に仏教に取り入れられました。坂内龍雄の説によれば、元々は地母[[神]]として信仰されていたダーキンという名の存在であり、彼女は豊穣を司る農耕神として、ドラヴィダ族の信仰対象でもありました。彼女がジャッカルに関連づけられたのは興味深く、日本での狐との結びつきは後の稲荷信仰に影響を与えました。

ヒンドゥー教におけるダーキニー

ヒンドゥー教では、ダーキニーは女神カーリーの眷属として位置づけられ、敵を倒し、その血肉を食らう存在とされています。このように、ダーキニーは恐怖と力を象徴する神格でした。彼女はまた、大乗仏教においても重要な役割を果たしており、特に呪文や儀式を通して害を取り除く存在として捉えられています。

日本における伝来と変貌

平安時代に入り、空海により真言密教が日本に伝わると、荼枳尼天もその中に位置づけられました。彼女は胎蔵曼荼羅で南方の守護者として扱われ、多くの信仰を集めました。その姿は次第に半裸でありながら護符や肉、屍体といった物を持つものから、白狐に跨る美しい女神へと変化していきました。中世になると、天皇の儀式においても起用され、村落の守り神としての地位を得ました。

愛と性の神としての解釈

日本の中世において、荼枳尼天は性愛を司る神とされるようになり、特定の密教集団が彼女に関連する儀式を行っていました。こうした現象は、彼女に対する神秘的なイメージを強化し、特に鎌倉時代には性愛信仰の対象としての側面が強まったとされています。

習合と武士たちの信仰

荼枳尼天と狐の結びつきは、古来よりの信仰と文化に由来しており、戦国時代にかけて、武将たちが戦勝祈願のために荼枳尼天を祀るケースが増えていきました。特に、久保田城や小諸城のように、武士たちの生死がかかる場所での信仰は、彼女の持つ力を実感させるものでした。

近世・近代の荼枳尼天の信仰

近世に入ると、荼枳尼天は更に幅広く信仰されるようになり、伏見稲荷本願所や豊川稲荷のような寺院で、病気平癒や開運の神として崇拝されました。明治時代に神仏分離政策が実施されると、荼枳尼天に対する信仰は変容し、彼女を祭る寺社も変化を余儀なくされました。にもかかわらず、豊川稲荷などはその信仰を受け継ぎ、現在でも多くの人々が彼女に祈りを捧げています。

チベットにおけるダーキニー

一方、チベットではダーキニーはカンドとして知られ、重要な役割を果たしています。プラクティスにおいて、彼女たちは行者を悟りへ導く存在として尊ばれ、多くの儀式において重要な位置を占めています。特に無上瑜伽タントラにおけるダーキニーたちの存在は、深い神秘性を持ち、信仰の一環として捉えられています。

現代の荼枳尼天

現代の荼枳尼天は、歴史的な背景を持ちながらも、様々な形で今も信仰の対象であり続けています。彼女の持つ多様な面は、時代を超えて人々に影響を与えており、信仰の形態や理解は今後とも変化し続けるでしょう。

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