菅原通済

菅原通済：多才な実業家、その生涯と業績

菅原通済（1894年2月16日 - 1981年6月13日）は、実業家として多岐にわたる分野で活躍し、その手腕からフィクサーとしても知られた人物です。彼の生涯は、日本の近代史における経済、文化、そして社会の発展に深く関わっています。

波瀾万丈な青年時代

菅原通済は、鉄道土木技師の父のもと、東京で生まれました。幼少期は悪戯好きな少年として過ごし、旧制中学時代には喧嘩や放蕩に明け暮れ、幾度となく退学処分を受けるなど、型破りな一面を見せていました。しかし、1912年に一念発起して日本を飛び出し、海外での生活をスタートさせます。ロンドン大学を卒業したともされていますが、詳細は不明です。ジョホールではゴム農園を経営し成功を収める一方で、タングステンの密輸に関わるなど、非合法な行為も行っていたとされています。その後、アフリカや欧米を歴訪し、1920年に帰国しました。

実業家としての頭角

帰国後、菅原はゴム貿易で利益を上げますが、米相場で失敗し莫大な負債を抱えます。しかし、関東大震災後の復興需要を背景に、実業界で頭角を現しました。東京と大阪を結ぶ自動車専用道路の建設という壮大な計画を打ち立て、日本自動車道株式会社を設立。モデルケースとして大船 - 江ノ島間の道路を建設し、1930年に日本初の自動車専用道路として開通させました。また、鎌倉山の別荘地開発や江ノ島電鉄の経営にも携わるなど、その手腕を発揮しました。

文化事業への貢献

菅原は、文化事業にも積極的に関与しました。松竹の城戸四郎に大船の土地を勧め、松竹大船撮影所の設立に貢献。自身も松竹映画都市株式会社を設立し、田園都市住宅を分譲するなど、不動産業にも進出しました。映画関係では、国際映画社という洋画輸入商社を手掛け、小津安二郎監督の作品に俳優として出演するなど、文化面でもその才能を発揮しました。

社会貢献と晩年

戦後、菅原は土木工業協会の初代会長に就任。その後、三悪追放協会を組織し、売春・麻薬・性病の追放キャンペーンを展開するなど、社会貢献活動に尽力しました。また、作家としての活動も本格化させ、鎌倉文士たちと交流を深めました。晩年は、新宗教の後援にも力を入れ、1981年に肝硬変で亡くなりました。

常盤山文庫と美術コレクション

菅原通済は、美術品や古書の蒐集家としても知られていました。禅林墨蹟、水墨画、天神関係資料などを所蔵し、そのコレクションは国宝や重要文化財を含む一級品ばかりでした。これらのコレクションは、常盤山文庫として一般公開されましたが、菅原の死後、防災上の理由から公開を停止。現在は東京国立博物館などに寄託され、展示されています。

菅原通済は、実業家、文化人、社会活動家として、多岐にわたる分野でその才能を発揮し、日本の近代化に貢献しました。その波瀾万丈な生涯は、多くの人々に影響を与え続けています。

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