菅楯彦

菅 楯彦（すが たてひこ）の生涯と功績

菅楯彦は1878年に鳥取市で生まれ、伝統的な日本画を画く重要な画家として名を馳せた。本名を藤太郎とし、初めは盛虎と名乗ったが、後に菅楯彦に改名した。彼の作品は、独特の視点から大阪の風俗や歴史を描写し、「浪速の風俗画家」として知られています。

出身と教育

彼の父は日本画家であり、菅は幼いころから父の指導の下、絵画の技術を学びました。しかし、父が脳卒中で倒れた後、菅は中学校を退学し、家計を助けるために若くして着物の図柄や看板のデザインを始めました。この頃は多くの困難を抱え、独学により絵画の技術を磨くこととなります。

菅はさまざまな画派を研究し、大和絵や浮世絵、狩野派から多くを学びました。19歳で神戸新聞社で挿絵画家として働き始め、後に陸軍幼年学校で美術を教えることになります。この時期に洋画の技術も習得しました。

大正期の活動

大正元年には大正美術会を設立し、大正4年には大阪美術展の鑑査員に就任します。大正6年に結婚した富田屋の芸妓・八千代との出会いは、彼の人生に大きな影響を与えました。八千代は非常に人気のある名妓であり、彼女との結婚を機に菅の名前は広まり、画業も発展しました。しかし、八千代は1924年に早逝し、その後の菅の画業は彼女の死を乗り越える形で飛躍したとされています。

昭和期の名声

昭和初期には、歴史画や郷土の風俗画を多数手がけ、特に1928年には『春宵宜行』を出品し高い評価を受けました。この作品はフランス政府に買い上げられることとなり、菅の名声を国際的に広めました。その功績により、1930年には勲章を受賞します。

彼は1949年に大阪府文芸賞を受賞し、1956年には日本画家として初となる日本芸術院賞を受賞するなど、多くの栄誉を手に入れています。さらに、大阪市と倉吉市の名誉市民に選ばれたことは、彼の芸術的影響力を示すものです。

画風と代表作

菅の画風は非常に独自で、写生を基にした作品が多く、歴史や民俗、郷土芸能をテーマにしています。代表作には「皇后冊立」や書籍の挿絵があり、多くの人に感銘を与えました。彼の弟子の中には生田花朝女や内田稲葉などがいます。

最晩年

菅は1963年に85歳で亡くなりました。彼は一度も再婚せず、その臨終に際して「八千代の着物を掛けてくれ」と願ったと伝えられています。彼の芸術は今も多くの人々に愛され続けており、後世に多大な影響を与えています。彼の功績を称え、倉吉市によって設けられた「菅楯彦大賞」がその証左です。

このように菅楯彦は、浪速の風俗や歴史を描き続けた画家として、日本美術界において重要な役割を果たしました。

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