菊地裕介

菊地 裕介（きくち ゆうすけ）は、1977年7月27日に東京都で生まれた、日本のクラシック音楽界を代表するピアニストの一人です。

幼少期よりピアノに親しみ、皆川紀子、加藤伸佳両氏に師事して研鑽を積みました。桐朋女子高等学校音楽科を卒業後、渡仏してパリ国立高等音楽院ピアノ科に入学。名教授ジャック・ルヴィエ氏のもとで学び、1999年には同音楽院をピアノ科において1等賞という優秀な成績で卒業しました。さらに2001年には同研究科を修了し、高度な専門性を確立しました。この間、1997年から1998年にかけては、公益財団法人ローム ミュージック ファンデーションの奨学生として支援を受け、海外での学びを深めました。

パリでの学びを終えた後も、さらなる高みを目指してドイツに渡り、2003年10月からはハノーファー音楽大学のゾリステンクラッセ（ソリストクラス）にてアリエ・ヴァルディ氏に師事しました。この留学期間中である2004年から2006年には、文化庁の新進芸術家海外留学研修員としても選ばれています。2007年2月に一時帰国を果たし、日本での演奏活動を開始すると同時に、並行してゾリステンクラッセでの課程を修了しました。

国際的な舞台での活躍も目覚ましく、数多くの権威あるコンクールで素晴らしい成績を収めています。1994年の第63回日本音楽コンクールで第2位に入賞したのを皮切りに、2000年にはマリア・カナルス・バルセロナ国際音楽演奏コンクールで第1位を獲得。2003年にはポルトガル・ポルト市国際音楽コンクールでも第1位に輝きました。さらに2005年にはマウロ・パオロ・モノポリ国際ピアノコンクールで第2位、2006年にはスクリアビン国際ピアノコンクール、ジュネーヴ国際音楽コンクールの両方で第3位、そしてフランシス・プーランク国際ピアノ・コンクールでは再び第1位を獲得するなど、欧州各地でその実力を証明しました。これらの実績は、彼の国際的なキャリアの確固たる礎となっています。

現在、菊地裕介氏は日本を拠点に活動しており、演奏家として多忙な日々を送る傍ら、後進の育成にも情熱を注いでいます。具体的には、東京音楽大学の専任講師として、また名古屋音楽大学の客員准教授として教鞭を執り、若い才能の指導にあたっています。

演奏家としての彼の魅力は多岐にわたります。ソリストとしての圧倒的な存在感に加え、共演者からも絶大な信頼を得る伴奏者としての能力も傑出しています。レパートリーは非常に幅広く、十八番とする近代フランス音楽の作品群を中心に据えつつも、ハイドンのソナタのような古典派の作品にも意欲的に取り組むなど、時代の枠を超えた音楽性を示しています。また、彼のプログラミングは常に注目を集めます。特に、ドビュッシーの12の練習曲全曲やベートーヴェンのディアベリ変奏曲といった難曲を20代という若さでライブ演奏し、聴衆や批評家を驚かせたことは、彼の覇気に満ちた挑戦的な姿勢を象徴しています。

録音活動も活発に行っており、多くのCDやSACDがリリースされています。2008年に発売されたDENONからのデビューアルバム『イマージュ・フランセーズ』を除いて、そのほとんどがOctavia Tritonレーベルからリリースされています。これには、ソリストとしての主要なレパートリーに加え、共演者として参加した2台ピアノや連弾、チェロとのデュオなどのアルバムも含まれており、彼の多才な音楽家としての側面を捉えています。特に、ラヴェルのピアノ独奏曲全集や、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集（数回に分けてリリース）といった大規模なプロジェクト、そしてドビュッシー、シューマン、ラフマニノフといった作曲家の作品集は、彼の円熟した演奏を堪能できる貴重な音源となっています。

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