菊富士ホテル火災

菊富士ホテル火災について

1966年3月11日未明、群馬県利根郡水上町（現在の みなかみ町）にあった水上温泉「菊富士ホテル」で大規模な火災が発生しました。この火災は、死者30名、負傷者29名という甚大な被害をもたらし、社会に大きな衝撃を与えました。

ホテルの概要

菊富士ホテルは、1930年（昭和5年）に創業した歴史ある温泉旅館で、豪華な大理石風呂と鍋料理が自慢でした。国際観光旅館にも格付けされ、多くの観光客に親しまれていました。火災が発生した当時は、鉄筋コンクリート造の新館と、木造の別館が併設されていました。

火災の発生と延焼

火災は、午前3時30分頃、新館1階の警備室から出火しました。警備員が仮眠中に誤って石油ストーブを転倒させ、漏れた油に引火したのが原因です。警備員は初期消火を試みましたが失敗し、フロントで火災報知機を作動させ、従業員宿舎へ知らせに行きました。しかし、この時、玄関を開放したことで強風が建物内に吹き込み、火の勢いを増す結果となりました。火はまたたく間に燃え広がり、新館だけでなく、木造の客室や社長宅などを含む5棟、約2,640平方メートルが全焼しました。さらに、隣接するホテル白雲閣の建物2棟、約1,650平方メートルも延焼し、全焼しました。

被害状況

火災は約3時間後の午前6時頃に鎮火しましたが、宿泊していた219人のうち30人が死亡、29人が重軽傷を負いました。犠牲者の多くは、茨城県の葉タバコ耕作組合の団体客でした。宿泊客の多くは、就寝中で、火災に気づくのが遅れました。火災報知機は作動したものの、音が小さく、火災を知らせるには不十分でした。また、非常口の扉には内側から鍵がかけられており、避難を妨げる要因となりました。死者のうち半数は、火の手が及んでいない客室で、煙による一酸化炭素中毒で亡くなっています。不注意でストーブを倒した警備員は、重過失致死傷罪の容疑で逮捕されました。

火災後の影響

この火災により、ホテルは全焼し、その後取り壊され、更地となりました。跡地は長らく空き地でしたが、現在はリゾートマンションが建てられています。この火災は、防災対策の重要性を改めて認識させられる出来事となりました。

教訓と対策

菊富士ホテル火災は、以下のような教訓と対策を私たちに示唆しました。

火災報知機の重要性： 火災報知機の設置と、確実に火災を知らせるための適切な音量設定、定期的な点検が不可欠です。
避難経路の確保： 非常口の鍵を常時解除し、避難経路を確保することが重要です。また、宿泊客への避難経路の説明も必要です。
初期消火の重要性： 従業員への初期消火訓練の実施と、消火器の適切な配置が重要です。
防火構造の重要性： 建物の耐火性能を高めることが、火災の延焼を防ぐ上で重要です。特に、木造建築の場合は、防火対策を徹底する必要があります。
* 従業員の防災意識： 従業員一人一人が、火災の危険性を認識し、防災意識を持って行動することが重要です。

この火災は、二度とこのような悲劇を繰り返さないためにも、過去の教訓として語り継がれるべき出来事です。

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