菫 (橘型駆逐艦)

駆逐艦『菫』：戦火と平和輸送の軌跡

この記事では、日本海軍の駆逐艦『菫』の艦歴について詳細に解説します。植物のスミレに由来する艦名は、同名の樅型駆逐艦に続く2代目となります。

誕生と初期活動

『菫』は、橘型（改松型）駆逐艦の6番艦として、横須賀海軍工廠で建造されました。竣工後は、第十一水雷戦隊に所属し、訓練に従事しました。しかし、竣工直後に二番高角砲の不具合が発生し、修理のため瀬戸内海へ向かう予定が変更されます。

当時、第十一水雷戦隊は瀬戸内海の機雷投下を避けるため、日本海側への移動を余儀なくされました。舞鶴に到着した『菫』でしたが、舞鶴鎮守府から空襲時の危険性を理由に、舞鶴以外の港への移動を要請されます。そのため、小浜湾に一時停泊することとなります。その後、特殊警備艦に指定され、舞鶴鎮守府部隊に編入、舞鶴へ戻りました。終戦は舞鶴で迎えました。

終戦後とその後

1945年10月5日、『菫』は除籍されました。しかし、その役目は終わりませんでした。12月1日には特別輸送艦に指定され、復員輸送に従事することになります。戦後処理の一環として、賠償艦となり、1947年8月20日、香港においてイギリスに引き渡されました。そして、同年中にシンガポール沖で標的艦として処分されました。短い期間ではありましたが、戦後の復興にも貢献したと言えるでしょう。

歴代艦長

艦長については、『艦長たちの軍艦史』を参考に、以下の通りです。

艤装員長：高柳親光 少佐 (1945年2月10日～)
駆逐艦長：高柳親光 少佐 (1945年3月26日～)
駆逐艦長：若松武次郎 大尉 (1945年7月15日～)

※正確な着任・離任日は資料によって異なる場合があります。

関連資料

『菫』の艦歴を知る上で、以下の資料が役立ちます。

海軍歴史保存会『日本海軍史 第7巻』
片桐大自『聯合艦隊軍艦銘銘伝 全八六〇余隻の栄光と悲劇』
外山操『艦長たちの軍艦史』
「歴史群像」編集部『歴史群像太平洋戦史シリーズVol.43 松型駆逐艦』
アジア歴史資料センター（防衛省防衛研究所）
* 第十一水雷戦隊戦時日誌（昭和20年4月～7月）

これらの資料から得られた情報をもとに、本記事は作成されています。しかしながら、歴史的事実には様々な解釈が存在しうることをご理解ください。

まとめ

駆逐艦『菫』は、短い艦齢ながらも、訓練、警備、そして復員輸送と、様々な任務をこなしました。その歴史は、激動の時代の縮図と言えるでしょう。本記事が、日本海軍、そして『菫』の歴史を理解する一助となれば幸いです。

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