菰樽

菰樽とは

菰樽（こもだる）とは、日本酒を貯蔵する酒樽を、竹でできた箍（たが）で締め、さらに藁（わら）などで作られた菰（こも）で覆ったものです。主に祝宴の席で、木槌を使って蓋を割り開ける「鏡開き」という儀式に用いられます。

菰樽は、角樽（つのだる）や飾樽（かざりだる）と同様に、お祝いの席で贈られる酒樽であり、これらはまとめて「祝樽（いわいだる）」と呼ばれます。

角樽：円筒形の樽の上部に長い把手が付いており、朱や黒漆で塗られています。持ち運びやすさと形状が特徴です。
飾樽：店舗の開店や興行の開始時に、装飾用として多数重ねて飾られます。中身は空で、杉材の代わりに古くなった醤油樽や味噌樽が使われることもあります。
菰樽：かつては大家族や大宴会に贈られていましたが、近年では陶製や瓶詰めの容器が主流となっています。

歴史

酒樽の輸送は、かつては馬を使った陸路が中心でしたが、江戸時代になると船による海路輸送が盛んになりました。それに伴い、酒樽は二斗樽から四斗樽へと大型化しました。船での輸送時に樽が破損しないように、菰を巻いた「菰冠樽（こもかぶりたる）」が生まれたとされています。

菰には、他の酒樽との区別のため、蔵元の商標を焼き付けるようになり、これを「印菰（しるしこも）」と呼びました。

製造手順

菰樽は、以下のような手順で製造されます。

1. 菰作り：藁を編んで、樽を包む菰を作ります。印菰の印刷は、かつては版画や焼印で行われていました。
2. 縄作り：藁を編んで縄を作ります。
3. 荷造り：
樽に菰を巻き付けます。
綴じ縄で菰を筒状に綴じます。
樽の蓋側に口縄をかけ、周囲から閉じます。
樽の底側に尻縄をかけ、周囲から閉じます。
樽の蓋側を編み込みます（口がかり縄）。
* 樽の側面に、菰の上から横縄をかけます。

荷造りを行う職人は「荷師（にし）」と呼ばれ、熟練した荷師は1つの樽を10分ほどで仕上げます。近年では、藁くずの問題や上質な藁の入手が難しくなったため、ナイロンやポリエステル製の菰が使われることもあります。しかし、伝統的な藁の使用にこだわる企業も存在します。

一斗や四斗の樽には杉が使われますが、五升以下の容量には陶器が使われることが多いです。プラスチック容器が使われる場合は、日本酒に予め木香を付けることがあります。

現代における菰樽

昭和40年代までは、祝儀の贈答品として日本酒が定番であり、祝樽の需要も大きかったのですが、昭和50年代後半頃から日本酒の需要が減少したのに伴い、祝樽の需要も減少しました。

2022年現在、菰樽を製造する企業は日本に3社しか残っておらず、最大手は兵庫県尼崎市にある岸本吉二商店です。

岸本吉二商店は、異業種交流会でのアイデアをきっかけに、菰樽の中に日本酒以外のものを入れることができる「ミニ鏡開きセット」を開発しました。従来の菰樽は4斗サイズで高価でしたが、ミニ鏡開きセットはサイズを小さくし、蓋をマグネット式にして再利用できるようにしました。中に入れるものはジュース、ワイン、お菓子など自由に選ぶことができます。販売価格は5000円から7000円程度で、誕生日やホームパーティーなどで人気を集めています。

このように、菰樽は伝統的な製法を守りつつも、現代のニーズに合わせた新たな展開を見せています。

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