著作権法 (アメリカ合衆国)

アメリカ合衆国著作権法：歴史、国際比較、権利保護、そしてその課題

アメリカ合衆国著作権法は、文学、映像、音楽、美術、ソフトウェアなど、多様な著作物とその著作者の権利を保護するアメリカの法律です。米国内で創作された著作物だけでなく、海外の作品やインターネット上のデジタル著作物にも適用される場合があります。

1. 米国著作権法の隆盛と課題

1970年代以降、メディア・エンターテインメントやIT産業の世界的な発展に伴い、米国著作権市場は巨大化しました。しかし、その急激な発展に、著作権法の改正が追いついていないという課題も抱えています。

米国著作権法は、他の先進国と比較して著作権保護の水準が低いとされ、国内外から批判を受けています。また、著作権侵害を巡る訴訟も多く発生しており、国際的な問題にも発展しています。

本稿では、1947年から合衆国法典第17編に収録されている著作権法を中心に解説します。著作権法改正の歴史や関連訴訟についても触れますが、詳細については参考文献を参照してください。

2. 国際比較：大陸法系と英米法系の違い

米国著作権法が国際的な主流と異なる理由は、そのルーツである英米法にあります。

多くの国が加盟するベルヌ条約は、大陸法をベースに「著作者の権利（author's right）」を重視し、著作者の人格的権利を含む幅広い保護を保障します。一方、英米法をベースとする米国著作権法は「独占的に複製する権利（copyright）」と表現されるように、経済的利益の保護を主眼に置いています。

さらに、大陸法が法律の条文を重視するのに対し、英米法は判例法を重視します。そのため、条文だけを見ると、米国著作権法の権利保護は不十分で、ベルヌ条約に完全には適合していません。

3. 他国との相違点

大陸法系諸国との相違点は以下の通りです。

著作権の保護対象が狭い: 著作隣接権が明確に定められていない、著作者人格権の範囲が限定されているなど。
連邦法の制限: 過去には、「既発行」の著作物しか保護されなかった、著作権登録とマーク表示が必須だったなど。現在も、「固定」されていない著作物は保護されない、といった制限があります。
国際条約への対応が不十分: ベルヌ条約への加盟が遅れた、ローマ条約には加盟していないなど。TRIPS協定では、米国の産業構造に合わせて、著作隣接権を一部業界にだけ手厚く保護するというねじれ構造が存在します。
立法府の権限が複雑: 連邦法と州法の二重構造、ロビイングの影響が強いなど。
フェアユースの採用: 著作権侵害に当たらないフェアユース（公正利用）の基準が定められ、裁判所がケースバイケースで判断します。この柔軟な制度は、他国と比較しても詳細に規定されています。
デジタル化対応: インターネット関連事業者への免責規定（DMCA通告）などを世界に先駆けて明文化しています。

4. 国際条約の加盟状況

米国はベルヌ条約に加盟が遅れたため、著作権マーク「©」は、21世紀に入っても多くの著作物で使用されています。かつて米国では、著作物を政府当局に登録する「方式主義」が採られていましたが、現在は「無方式主義」に移行し、「©」の表示は法的な意味はなくなっています。

5. 国内業界への政治的配慮

米国著作権法の独自の特徴は、国内産業への配慮も背景に有ります。

レコード業界: ローマ条約に加盟せず、レコード保護条約のみに加盟しているのは、レコード製作者の権利保護を優先した結果です。
IT業界: コンピュータプログラムを著作権で保護する考え方は、米国から世界へ広まりました。ソースコードなどは著作権法で保護されています。

6. 現行法の詳細解説

(※本節は2019年2月時点の合衆国法典第17編に基づいています。頻繁な法改正があるため、最新情報は公式ウェブサイトを参照してください。)

6.1 合衆国法典第17編の全体構成

合衆国法典第17編は、頻繁な改正により構成が複雑になっています。

6.2 著作権の定義と保護範囲

6.2.1 権利の内訳

米国著作権法では、「排他的・独占的な権利」として、複製権、翻案権、頒布権、実演権、展示権、デジタル実演権、著作者人格権（視覚芸術作品に限定）を定義しています。

6.2.2 著作物の類型

言語著作物、音楽著作物、演劇著作物、無言劇・舞踊著作物、絵画・図形・彫刻著作物、映画・視聴覚著作物、録音物、建築著作物、編集著作物、二次的著作物などが含まれます。

6.2.3 どこまでが著作物なのか

創作性と固定要件が、著作物性の判断に重要です。創作性がないもの、固定されていないもの、合衆国政府の作品などは保護されません。

6.2.4 著作権の保護期間

著作財産権は、一般的に著作者の没後70年間です。著作者人格権は、視覚芸術作品に限定され、著作者の死後まで保護されます。保護期間は、著作物の創作日や発行日によって異なります。

6.2.5 著作物の発行の定義

「発行」とは、複製またはレコード収録した著作物を一般に頒布することです。インターネット上の公開も、発行に該当する場合があります。

6.2.6 著作権保護の手続

1978年以降は、著作権登録は必須ではありませんが、訴訟を起こす場合などは必要となる場合があります。著作権マーク「©」の表示も必須ではありません。

6.3 国際的な著作物への対応

著作者の国籍や発行国などによって、米国著作権法の適用が異なります。

6.4 著作者と第三者の権利関係

6.4.1 著作者と著作権者の相違点

著作権者は、著作権を有する者です。職務著作物や集合著作物では、著作者と著作権者が異なります。

6.4.2 第三者への著作権の移転

著作権は譲渡、ライセンス許諾、相続などが可能です。

6.4.3 所有者の権利と消尽論

著作物の所有者は、著作権者の許諾なしに売却できます（消尽論）。ただし、録音物やコンピュータプログラムなど、一部例外があります。

6.5 著作物の利用と著作権侵害

6.5.1 フェアユース（総論）

フェアユースとは、批評、解説、ニュース報道、教育、研究などの目的で、著作物を無断利用しても著作権侵害にならない場合があります。目的や性質、著作物の内容、利用割合、市場価値への影響などを考慮して判断されます。

6.5.2 フェアユース以外の個別規定

図書館や文書資料館による複製、コンピュータプログラムのコピーなど、著作権侵害に当たらない個別規定があります。

6.6 著作権侵害と救済手段

6.6.1 民事訴訟

著作権侵害を受けた者は、損害賠償や差止命令などを請求できます。

6.6.2 間接侵害（二次侵害）

寄与侵害や代位侵害など、直接侵害者以外も責任を負う場合があります。DMCA通告は、インターネット事業者の免責規定です。

6.6.3 刑事手続

故意に商業的利益を目的とした著作権侵害は、刑事罰の対象となります。

6.7 連邦著作権法と関連法の関係

6.7.1 州法との関係

連邦法と州法が矛盾する場合は、連邦法が優先されます。ただし、州法で追加保護することも認められています。

6.7.2 近接する各種連邦法との関係

特許法、商標法、独占禁止法、憲法修正第1条など、関連する法律との関係を整理する必要があります。

6.7.3 合衆国憲法との関係

特許・著作権条項、州際取引条項、表現の自由との関係が重要です。

6.8 著作権管理サービス

6.8.1 合衆国著作権局

USCOは、著作物の登録や権利移転などを担います。

6.8.2 著作権管理団体

著作権管理団体は、著作権者の権利行使を支援します。

7. 法改正の歴史

米国著作権法は、1790年の制定以来、何度も改正されてきました。国際化やデジタル化への対応が、改正の大きな要因となっています。

8. 著作権侵害と紛争解決

著作権侵害を巡る訴訟は多数発生しており、裁判所やADRによる紛争解決が行われています。

9. フェアユース採用の評価

フェアユースの採用は、法的な安定性と柔軟性のバランスが課題です。

10. 判例

フェアユース、国際的準拠法、消尽論、著作者人格権、ADRなどを巡る重要な判例をいくつか紹介します。

参考文献

(上記、参考文献のリストは省略しました。本文中に記載されている参考文献は、実際の文献名と参照情報で置き換えてください。)

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