蒲原鉄道EL形電気機関車

蒲原鉄道EL形電気機関車

蒲原鉄道EL形電気機関車は、かつて日本の蒲原鉄道線で運行されていた直流用の電気機関車です。この機関車は、特に貨物輸送のために設計され、その独特な構造と歴史的な役割で知られています。実際には一両のみが製造され、蒲原鉄道で使用されたため、珍しい存在となっています。

背景

蒲原鉄道線は、1923年10月に開業し以来、貨物輸送は主に電車が牽引する混合列車の形態で行われていました。しかし、1930年10月に全線が開通し、貨物輸送の需要が高まったことから、専用の電気機関車が必要とされました。この必要に応じて、EL形電気機関車が日本車輌製造名古屋本店で製造されました。新たに登場したこの機関車は、主に貨物牽引を目的として設計されました。

車体とデザイン

EL形電気機関車の車体は、全長9,180mmの凸形鋼製であり、車体の中央部分には運転室が配置されています。運転室の前後には、主要な機器を収納するためのボンネットが取り付けられ、デザインはウェスティングハウス社とボールドウィン社の電気機関車に似たスタイルが特徴です。

運転室の構造には工夫が施されており、乗務員用の扉は運転室の前後面の左側に配置され、これによりボンネットが右側に寄せられています。このデザインによって運転のしやすさが向上し、乗務員の安全性確保にも寄与しています。前面には前照灯と、真鍮製社章が取り付けられており、その外観は一目で寒波鉄道の車両と認識されるようになっています。

機構

EL形電気機関車は、4基の主電動機を搭載しており、東洋電機製造製の直流直巻電動機が使用されています。これにより、牽引力が高められ、貨物列車の運行において重要な役割を果たしました。また、台車はBLW社の設計を採用しており、安定した走行を提供します。制動装置についても優れた仕様が採用され、ウェスティングハウス社のAMF自動空気ブレーキシステムが利用されています。

役割の変遷

導入当初は貨物輸送に基づく運用がメインでしたが、蒲原鉄道線における主要な輸送物は米穀であったため、全体的な需要は季節や時期によって変動しました。最盛期でも年間の輸送量は約10万tにとどまり、1960年代には定期的な貨物列車のほとんどが姿を消しました。

その結果、EL形は主に村松車庫内の構内入換機や冬季の除雪業務に従事することが多くなりました。スノープロウを取り付けるための改造も行われ、除雪作業が必要な時期にはその能力を発揮しました。

最終的に、1999年に蒲原鉄道線が完全に廃止されるまで運用され、同年には最後の活躍を見せるイベントにも参加しました。その後は静態保存され、現在も一部の歴史的車両と共に保存状態で保管されています。

結論

このように、蒲原鉄道EL形電気機関車はその短い運用期間にもかかわらず、貨物輸送や除雪作業を通じて重要な役割を果たしました。今ではその存在が地域の鉄道史の中で特別な位置を占めており、失われゆくローカル鉄道の貴重な記憶として保存されています。

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