蔡温

蔡温（さいおん）

蔡温（1682年 - 1762年）は、琉球王国の政治家であり、三司官を務めました。彼は羽地朝秀の後を継ぎ、近世的な民衆支配の制度を確立したことで知られています。大和名としては具志頭親方文若（ぐしちゃんウェーカタぶんじゃく）を名乗り、蔡氏具志頭殿内の出身です。久米三十六姓の流れを汲む人物でもあります。

生涯

少年期から青年期

蔡温は1682年、那覇の久米村で蔡氏志多伯家の次男として生まれました。幼名は蒲戸（カマド）と名付けられました。父は久米村の有力者であり、蔡温は幼い頃から学問に励む一方、反抗的な一面もあったと伝えられています。17歳頃から学問に本格的に取り組み、論語をはじめとする多くの書物を読みました。19歳で通訳、21歳で漢文読書の教師、25歳で講談の教師となるなど、早くから才能を発揮しました。

大陸赴任と国師就任

1708年、27歳で進貢存留役として清の福州に赴任しました。この時、凌雲寺で出会った隠者から実学の重要性を教えられ、陽明学に傾倒しました。帰国後、琉球北部を視察し、1711年には皇太子（後の尚敬王）の教師である世子師職兼務近習役に任命されました。尚敬王が即位すると、蔡温は国師という特別な地位に就き、琉球国全体の指導を担うことになりました。

内政改革

蔡温は三司官として、琉球王国の内政改革に尽力しました。1730年には『系図座規模帳』と『大与座規模帳』を、翌年には『位階定』を編纂し、制度の成文化を進めました。また、1732年には農民や役人に対する道徳規範・生活心得である『御教条』を公布し、社会の安定を図りました。農業政策においては、耕地の永久耕作権を農民に与え、農業用水路の整備を進めました。また、農民を組合に所属させ、相互協力を促すとともに税収の安定化を図りました。林業政策においては、各島の木材需給状況を考慮し、山林の保全と計画的な利用を推進しました。

晩年

1752年に尚敬王が死去すると、蔡温は隠居を申し出ましたが、薩摩藩の指示により三司官を退官するのみで職務を継続しました。その後も著作活動を続け、1762年に80歳で死去しました。大正4年（1915年）には、その功績が認められ正五位を追贈されました。

人物像と評価

蔡温は実学を重んじ、現実的な視点を持つ政治家でした。山林の保全や河川改修など、自ら現場に赴き指揮を執ることも多かったようです。彼の著作は多岐にわたり、『澹園全集』としてまとめられています。彼の政策は、琉球王国の発展に大きく貢献したと評価されています。

主な政策

農業政策: 耕地の永久耕作権を農民に与え、農業用水路の整備を進めました。また、農民を組合に所属させ、相互協力を促すとともに税収の安定化を図りました。
林業政策: 各島の木材需給状況を考慮し、山林の保全と計画的な利用を推進しました。植林を奨励し、海岸部には潮垣、内陸部には抱護と呼ばれる林を設けました。

蔡温は、停滞していた琉球王国を立て直し、その後の発展の礎を築いた名宰相として、今もなお高く評価されています。

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