久米三十六姓

久米三十六姓とは

久米三十六姓（くめさんじゅうろくせい）は、14世紀末から琉球王国に渡来したとされる、中国の福建省（当時は閩と呼ばれていた）出身の人々、およびその子孫の総称です。彼らは、琉球王国の外交や貿易において重要な役割を果たし、その後の琉球社会に大きな影響を与えました。

歴史的背景

一般的には、1392年に明の洪武帝が、琉球国王察度に学者や航海士などの職能集団を下賜したことが始まりとされています。これらの人々は閩人三十六姓とも呼ばれ、那覇の久米村（現在の那覇市久米）に定住しました。ただし、実際には、福建省出身者だけでなく、客家も含まれていた可能性が指摘されています。

洪武帝からの下賜という説がありますが、これは大量の集団移住ではなく、琉球に形成された華人社会が基礎となり、明からの人材提供という側面があったと考えられています。彼らは、朝貢事務や船舶の運航に従事するようになり、琉球に帰化しました。また、明は人材育成にも協力し、多くの留学生を国子監で受け入れました。留学生の受け入れは、1868年まで続けられました。

『明実録』には、1547年に三十六姓が琉球に入籍した以上、福建に籍を置くのは違法であるとする皇帝の判決が下されたと記録されています。久米三十六姓は、久米村に定住したことから、この名前で呼ばれるようになりました。「三十六」という数字は、当時の中国では「非常に多い」という意味で使われており、実際に三十六人だったわけではありません。一時は五姓にまで減ったとも言われています。

福建省福州市台江区にある柔遠駅（琉球館）の資料には、「蔡・鄭・金・林・陳・毛・王・梁・阮・孫・曾・魏・程・紅・周・李・高・呉・瀋・田・馬・銭・宗・葉・范・楊・郭・翁・于・韓・賈・兪・宋・陶・伍・江」の36姓が記録されています。

久米村と久米三十六姓

久米三十六姓の末裔や、久米村に住んでいた人々は「久米村人（くにんだんちゅ）」と呼ばれました。彼らは琉球が沖縄県になるまで約500年の間、主に中国と琉球間の外交や貿易に従事し、久米士族として、三司官を務めた蔡温や謝名利山をはじめ、多くの政治家や学者を輩出しました。

18世紀の『中山世譜』には、1392年に洪武帝が他の下賜品とともに閩人三十六姓を賜ったと記されています。しかし、明側の同時代の史料である『明実録』には同様の記述がないことから、近年では研究者の間で、三十六姓下賜説に疑問を呈する意見も出ています。

また、『朝鮮王朝実録』には、1470年に「那覇には、唐人（中国人）が商売のために来て、住み着いている」という記述があり、15世紀には貿易目的で琉球に渡来し、居住していた中国人がいたことがわかります。このことから、久米三十六姓は、14世紀末以降に貿易や商売目的で渡来した中国人たちが、後に自分たちの先祖は洪武帝によって下賜されたという「物語」を作り上げたという説もあります。

江戸時代初期の薩摩藩による琉球侵攻後、薩摩藩に従わずに処刑された三司官の謝名利山も、久米三十六姓の一人です。

門中

門中（もんちゅう）とは、血縁集団のことです。久米三十六姓には、以下のような門中があります。

まとめ

久米三十六姓は、琉球王国の歴史において重要な役割を果たした人々です。彼らの存在は、琉球の国際的な交流や文化の発展に大きく貢献し、その末裔は現在も沖縄で活躍しています。

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