蔡順

蔡 順（さい じゅん）

蔡順は、後漢時代に活躍した著名な孝子であり、彼の生涯は母への献身と忠誠であふれています。彼の本貫は汝南郡安成県で、字は君仲です。彼の経歴には多くの感動的な逸話が残されており、特に彼の母への愛情に関する話は広く知られています。

生い立ちと経歴

蔡順は若い頃に父を失い、母と二人三脚で生きていくことになりました。彼は母に仕え、孝行に励むことで知られ、やがてその名声は広まりました。母が亡くなると、太守の韓崇によって東閤祭酒に任命されましたが、蔡順は母の墓から離れることができず、そのことが理由で官に就くことを拒否しました。彼は最終的に自宅で80歳の寿命を迎えました。

感動的な逸話

蔡順の生涯には、彼の深い孝行や母への思いを示すエピソードがいくつか存在します。王莽の乱による飢饉の年、蔡順は桑の実を拾い、自らと母のために分けていました。彼が赤眉の反乱兵に見つかると、「黒いものは母に捧げるため、赤いものは自分が食べるためです」と話しました。この彼の言葉に反乱兵たちは心を打たれ、白米三斗と牛蹄一対を与えました。

また、ある日、蔡順が薪を取りに外出していると、母が急な来客のために不安になり、自分の指を噛みました。蔡順はそれを感じ取り、すぐに帰宅して母の理由を尋ねました。母は、急な客が来たために指を噛んだだけであり、蔡順が自分を思って帰ってくることを信じていたのです。

さらに、母が亡くなった際、蔡順は葬儀の最中に火災に見舞われました。彼は墳墓から遺体を抱きかかえ、突如として迫る火から守るため天に向かって叫びました。その結果、火は他の部屋に燃え移るも、遺体には火が及ばなかったと言います。

母が90歳で亡くなった後も、蔡順は強い思いを抱いていました。彼は亡き母が雷を恐れていたことを忘れず、雷鳴がするたびに「順はここにいます」と泣いていたと言います。この心情を知った韓崇は、雷のたびに彼を墓所まで送るために車馬を手配しました。

結論

蔡順の生涯は、母への深い愛情が紡ぎ出す数々の感動的な出来事によって彩られています。その姿勢は、孝行の範例として後世に語り継がれ、多くの人々に敬愛されています。彼の名は、後漢書の伝記にも記録されており、その影響は今なお色あせることがありません。

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