蔣琬 (明)

蔣琬（しょう えん）は、明代中期に活躍した軍人です。字を重器、号を筠清と称しました。揚州府江都県を本貫とし、1433年に蔣義の子として誕生しました。彼の家系は代々軍功を立てており、祖父の蔣貴が定西侯の爵位を保持していました。

1449年、祖父の死去に伴い、父が病を患っていたため、蔣琬が10月に定西侯の爵位を継承しました。1462年には、侍衛として宮中での宿直を命じられ、皇帝の身辺警護に当たりました。1464年には、平羌将軍の印を受け、総兵官として甘粛に駐屯し、現地の防衛を担いました。この地で蔣琬は、甘州沙河に屯堡を築き、防衛体制を強化しました。

1472年、蔣琬は北京に召還され、協守南京の任務に就き、同時に提督操江を兼任しました。南京の防衛を固める一方で、長江の水運を監督する重要な役割も担いました。1474年には、入朝して十二団営を監督するよう命じられ、さらに神機営の兵の統括も兼任しました。蔣琬は、軍事的な手腕を発揮する一方で、政治的な提言も積極的に行いました。彼は、北京の外城城壁の整備を求める上奏を行い、都市防衛の強化を訴えました。また、豪族による良田の侵奪を厳禁するよう上奏し、民衆の利益を守ろうとしました。

1477年、蔣琬は京軍を率いて大同・宣府で秋の侵入警戒にあたり、北方の異民族からの侵攻に備えました。彼は、時宜に応じた十数項目の上奏を行い、その全てが成化帝に受け入れられました。1479年には、宦官の汪直と共に遼東の辺事を調査し、国境地帯の状況を把握し、対策を講じました。1484年には、克失と小王子が国境近くで遊牧を始めたため、蔣琬は京営の兵を率いて警戒にあたりました。彼らが撤退すると、蔣琬は軍を返しましたが、その功績により、太保・兼太子太傅の位を加えられました。

1487年8月、蔣琬は55歳で亡くなりました。その死後、涼国公の位が追贈され、諡は敏毅とされました。蔣琬は、生前に『筠清軒集』10巻、『奏議』2巻、『雑文』1巻といった著作を残しました。これらの著作は、彼の思想や活動を後世に伝える貴重な資料となっています。蔣琬の死後、子の蔣驥が定西侯の爵位を継承しました。蔣琬の生涯は、軍人として、また政治家としての多才な活躍を示すものであり、明代史における重要な人物の一人として、記憶されるべきでしょう。

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