蔣貴

明朝の勇将、蔣貴の生涯

蔣貴（しょう き、1380年 - 1449年）は、明代初期に活躍した軍人であり、字を大富と称しました。揚州江都県を本貫とする彼は、その生涯を通じて数々の戦場で武功を挙げ、明朝の安定に貢献しました。

生い立ちと初期の軍歴

蔣貴は、蔣従龍の子として生まれました。1399年（建文元年）に靖難の変が勃発すると、燕山衛の兵卒として燕王朱棣の挙兵に従軍し、その勇猛さと優れた騎射の腕前で頭角を現しました。体格雄偉で膂力に優れていた彼は、数々の戦功を重ね、昌国衛指揮同知へと昇進しました。永楽年間には、ベトナム遠征や漠北遠征にも参加し、都指揮僉事、彭城衛事を管掌するまでになりました。

四川での反乱鎮圧

1427年（宣徳2年）、四川省松潘でチベット系諸族が反乱を起こすと、蔣貴は右参将として総兵官の陳懐に従い、鎮圧に当たりました。険しい山道を物ともせず、道案内を募りながら反乱軍の根拠地を急襲しました。一日十数戦を繰り広げ、反乱軍を撃破し、都指揮同知に進みました。その後、密雲に駐屯し、守備を固めました。1432年（宣徳7年）には再び参将として陳懐を補佐し、松潘の守備を強化しました。1433年（宣徳8年）には都督僉事に進み、副総兵として方政と共に松潘に駐屯しました。

1434年（宣徳9年）、松潘の諸族が再び反乱を起こすと、蔣貴は4000の兵を率いて任昌の大寨を攻略し、都指揮の趙得や宮聚の軍勢と合流して龍渓など37寨を平定し、1700人を斬首するという大戦果を挙げました。この功績により、蔣貴は都督同知に進み、総兵官として平蛮将軍の印を受け、方政に代わって松潘に駐屯することになりました。

北方モンゴルとの戦い

1435年（宣徳10年）、英宗が即位すると、蔣貴は軍士への食糧増配を上奏しました。1436年（正統元年）、北京に召還され、右都督に任命されました。北元の阿台汗が甘州・涼州へ進攻すると、蔣貴は平虜将軍の印を受け、軍を率いてこれを討伐しました。モンゴル軍が荘浪を侵犯し、都指揮の江源が戦死するという事態が発生すると、侍郎の徐晞が蔣貴を弾劾しましたが、朝廷は蔣貴を甘州の軍の人選に当たらせようとしていたため、弾劾は不問に付されました。

1437年（正統2年）春、モンゴル軍が賀蘭山の北方に駐屯しているという情報が入ると、英宗は蔣貴と都督の趙安に涼州塞から出撃して掃討するよう命じました。蔣貴が魚海子に到着した際、都指揮の安敬が水や草がないと言って撤退したため、陝西に駐屯していた都御史の陳鎰が安敬を斬り、蔣貴を叱責して功を立てさせるよう上奏しました。この時、ドルジ・ベクが明に入貢したため、モンゴル軍の勢力は一時的に弱体化しました。

蔣貴は軽装の騎兵を率いて狼山でモンゴル軍を破り、追撃して石城に到達しました。その後、ドルジ・ベクが阿台汗を頼ったとの情報を得ると、蔣貴は2500人を率いて先鋒となりモンゴル軍を奇襲することにしました。副将の李安がこれを止めようとすると、蔣貴は剣を抜いて「あえて軍を阻む者には死を」と叱責し、鎮夷に進軍しました。間道を疾走して3日後の夜、敵の根拠地を急襲し、放牧中の馬群に突入、兵士に鞭で弓袋を打たせて馬を驚かせ、敵を大混乱に陥れました。馬を失ったモンゴル軍は徒歩で戦うしかなく、蔣貴の騎兵に蹂躙され敗走しました。指揮の毛哈阿が敵陣に突入し、モンゴル軍を破り、さらに軍を分けて両翼を形成、偽の兵営を仕立てるなど、奇策を用いて80里にわたって転戦し、モンゴル勢力を西北辺から駆逐することに成功しました。

この大戦果により、1438年（正統3年）4月、蔣貴は定西伯に封じられ、世券を受けました。1439年（正統4年）には任礼に代わって甘粛に駐屯しました。

麓川の反乱鎮圧

1440年（正統5年）冬、蔣貴は麓川の思任発の反乱を討つため、北京に召還されました。1441年（正統6年）、平蛮将軍の印を受け、総兵官として王驥とともに軍を率いて金歯に到着しました。分進して麓川の上江寨を突き、杉木籠山の7寨と馬鞍山の象兵の陣を破り、蔣貴の功績は群を抜いていました。1442年（正統7年）に凱旋すると、定西侯に爵位を進められました。

1443年（正統8年）夏、再び平蛮将軍の印を受け、王驥とともに思任発の子である思機発を討ち、その寨を攻め破りました。この戦いで蔣貴は子の蔣雄を失いました。

死去とその後

1449年（正統14年）1月21日、蔣貴は突然の風疾により死去しました。享年70歳でした。彼の功績を讃え、涇国公の位が追贈され、諡は武勇とされました。子の蔣義が病のため後を継ぐことができず、蔣義の子である蔣琬が定西侯の爵位を継承しました。

蔣貴の生涯は、数々の戦功と不屈の精神に彩られています。彼は明朝の安定に大きく貢献した勇将として、後世に語り継がれることでしょう。

参考文献
『明史』巻155 列伝第43
定西侯涇国武勇蔣公神道碑（徐紘『明名臣琬琰録』巻14所収）

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