蔵の宿

蔵の宿（くらのやど）

『蔵の宿』は、西ゆうじが原作、田名俊信が作画を手がけた日本の漫画作品です。芳文社が発行する漫画雑誌『週刊漫画TIMES』にて、1998年9月から2010年8月まで長期にわたり連載されました。単行本は同社の芳文社コミックスレーベルより刊行されており、1999年から2009年9月にかけて全59巻が発売されています。連載中の2000年には、テレビドラマとしても制作され、人気を博しました。

あらすじ

物語は、都内の一流ホテルでアシスタントマネージャーとしてキャリアを積んでいた神尾茜が、夫の修平と共に東京で暮らす場面から始まります。ある日、福井県で「蔵岡酒造」という名の老舗造り酒屋を営む父、才治郎が病に倒れたとの知らせを受け、茜は実家へ帰省します。病床に伏せる父は、茜に家業である酒造りを継いでほしいと切に願うも、間もなくして急逝してしまいます。酒蔵を継ぐことに対して最初は強い抵抗を感じていた茜でしたが、荒廃した酒蔵を改装し、そこを新たな舞台として旅館を始めることを決意します。こうして、訪れる客の疲れを癒し、心のぬくもりを感じられるような宿を目指し、旅館「蔵の宿」が開業されるのです。

テレビドラマ

本作は、2000年10月2日から同年12月1日まで、TBS系列の昼帯ドラマ枠「ドラマ30」にて放送されました。このテレビドラマは中部日本放送（CBC）が制作を担当し、放送時間は月曜日から金曜日の午後1時30分から午後2時00分（日本標準時）でした。全9週にわたり、合計45回が放送されました。物語の舞台が福井県であることから、日本テレビ系列とテレビ朝日系列のクロスネット局である福井放送でも、平日の午前に集中して放送されるという異例の対応が取られました。

主要な登場人物とその配役は以下の通りです。

神尾茜（演：田中美奈子）：蔵岡酒造の当主、才治郎の一人娘。一流ホテルでの将来を嘱望されながらも退職し、「蔵の宿」を開業する。
神尾修平（演：池田政典）：茜の夫。元ビールメーカーの研究員だったがリストラに遭い、後に蔵岡酒造の蔵元となる。
幸田耕三（演：田口計）：蔵岡才治郎の親族（原作では才治郎の父の弟）。過去の経緯から蔵岡家を恨み、蔵岡酒造の乗っ取りを画策する地元の町議会議員。
増田則夫（演：江幡高志）：蔵岡町で唯一の既存宿泊施設「増田旅館」の経営者。「蔵の宿」を敵視し、町議会議員も務める。
蔵岡信江（演：櫻町弘子）：才治郎の妻で、茜の母。「蔵の宿」開業後は旅館の経理を担当する。
蔵岡才治郎（演：長門勇）：蔵岡酒造の先代蔵元。物語の冒頭で病により急逝し、茜に家業を託す。

その他にも、そば打ち名人、たばこ屋の店主、杜氏、利き酒師など、宿や地元に関わる様々な人物が登場します。ドラマの脚本は友澤晃一が手がけ、堀場正仁、大羽秀樹、佐藤和成らが演出を担当しました。主題歌には徳永英明の楽曲「種」が採用されました。

続編『蔵の宿 雪と花と』

『蔵の宿』の本編完結後、引き続き『週刊漫画TIMES』にて、主人公の茜の養女である雪子を主役に据えた次世代編『蔵の宿 雪と花と』が連載されました。この続編は2011年までに単行本が既刊3巻刊行されています。

しかし、原作者である西ゆうじが2013年2月6日に逝去したことにより、連載は一時中断される事態となりました。その後、西の遺族や作画者の田名、編集部の間で協議が重ねられ、利根敦が脚本を引き継ぐ形で同年8月に連載が再開されました。そして、同年9月に最終回を迎え、物語は完結に至りました。

関連情報

作品の舞台設定を構想するにあたり、福井県坂井市にある久保田酒造がモデルの一つになったとされています。

もう一度検索