蔵本由紀

蔵本由紀: 日本の非線形動力学の権威

蔵本由紀（くらもと よしき、1940年生まれ）は、日本を代表する物理学者であり、非線形動力学や非平衡統計力学の分野で大きな業績を残してきました。彼は1964年に京都大学の理学部物理学科を卒業後、1970年には同大学より理学博士の学位を取得しました。その後、蔵本氏は京都大学名誉教授として長年にわたり教鞭を執り、専門とする分野での発展に寄与してきました。

学歴と職歴

蔵本氏は卒業後、九州大学で助手を務め、続いて京都大学で助教授、教授としての地位を築きました。彼は1985年に京都大学理学部教授に就任し、1995年から2004年まで大学院理学研究科の教授を務めました。その後、京都大学を退官し、名誉教授となり、北海道大学でも特任教授として教鞭をとりました。彼の研究は、非線形科学の第一人者として世界中で知られています。特に、リミットサイクル振動子が作り出すネットワークのダイナミクスに関する研究が著名です。

研究業績

蔵本氏の研究の中心となるのは、非線形動力学と統計力学であり、彼の代表的な業績の一つには「蔵本－シバシンスキー方程式」があります。これは振動場の位相不安定性を示すもので、時空カオスの最初の例とされています。また、振動子集団に関する可解なモデルである「蔵本モデル」の開発も重要な成果です。彼はその後も反応拡散系の複素ギンツブルグ-ランダウ方程式を考案し、結合振動子系における引き込み現象の研究を進めました。

最初は相転移の統計力学を研究していましたが、イリヤ・プリゴジンの散逸構造論に関する疑問から、非線形動力学の研究へとシフトしました。蔵本氏が1984年に出版した著書『Chemical Oscillations, Waves, and Turbulence』は、非線形動力学の分野で非常に高く評価されており、多くの引用を受ける名著となっています。これは出版部数を上回る引用件数があるとされ、彼の業績がこの領域でどれ程重要であるかを示しています。

受賞歴

蔵本氏の研究成果は数多くの賞によって認められています。2005年には朝日賞を受賞し、その業績に対して高い評価が与えられました。2017年にはWIRED Audi INNOVATION AWARDを受賞し、さらに2023年には米国応用数理学会のJürgen Moser Lectureを受けました。また、2025年にはボルツマン賞の受賞も予定されています。

主な著作

蔵本氏は、数多くの専門書や共著を著しています。特に、彼の代表作である『Chemical Oscillations, Waves, and Turbulence』は非線形動力学の分野で重要な参考文献となっています。また、岩波書店から出版された『新しい自然学—非線形科学の可能性』や『非線形科学』といった著作も多くの読者に親しまれています。

蔵本由紀の研究は、非線形動力学の重要な発展に寄与しており、彼の業績は学生や研究者にとっても大きな影響を与え続けています。

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