蕪栗沼

蕪栗沼について

蕪栗沼（かぶくりぬま）は、宮城県大崎市（旧田尻町）に位置する美しい沼です。この沼は北上川水系に属し、その大部分はヨシやマコモに覆われており、水面を見つけるのは少し難しいかもしれません。沼の面積は100ヘクタールから150ヘクタール程度とされ、周囲にはヤナギやタコノアシなどの植物も豊富に存在します。

鳥類と環境保全

蕪栗沼は、多くの冬鳥が越冬する場所として知られています。特に、日本国内では有数のマガンの飛来地として有名で、早朝や夕方に飛び立つ姿やねぐら入りの様子を見ることができます。マガンの他にも、オオヒシクイやオオハクチョウ、コハクチョウなどが飛来します。大崎市だけでなく、登米市や栗原市に跨る周辺の水田地帯と一緒に、蕪栗沼は「国指定蕪栗沼・周辺水田鳥獣保護区（特別保護地区）」として保護されています。この地域の面積は3061ヘクタールで、その中に特別保護地区として423ヘクタールが指定されています。また、蕪栗沼はラムサール条約にも登録されており、これは周辺の水田を含む珍しい例です。

特に冬に行われる「ふゆみずたんぼ」という取り組みが注目されます。これは、水を張った田んぼを冬の間耕さずに放置する方法で、多くの渡り鳥に餌場と休息地を提供します。このようにして、渡り鳥と農業が共生することを目指す活動が展開されています。この他にも、沼にはフナ、コイ、マハゼ、ボラなどの魚類も生息しています。

歴史的な背景

蕪栗沼の地名には歴史的な背景があり、江戸時代に著された仙台藩の地誌に記録があります。沼の周りには栗の木が生えていて、美味しい栗が採れることから「蕪栗」という名前がつけられたという説があります。別の説では、地元には熊野神社があり、そこで採れた風味豊かな蕪が「蕪栗明神」と呼ばれたことが村の名前の由来ともされています。

かつて蕪栗村は、沼で捕獲された鳥を仙台藩に献上することもあったことが記録されています。蕪栗沼は丘陵地に囲まれた遊水地で、周囲の三角州は新田開発に最適な地形となっていました。江戸時代から昭和の戦後にかけて、沼の周りは干拓されて水田へと変わっていきました。しかし、1997年には隣接する白鳥地区が沼地として復元され、今大変貴重な自然環境が再生されました。

現在の取り組み

1999年には、田尻町にて「渡り鳥の食害を補償する条例」が制定され、当初は農業への被害から問題視されていた渡り鳥との共生を目指した活動が始まりました。2005年には、沼地とその周辺水田が鳥獣保護区に指定され、翌年にはラムサール条約による登録湿地となりました。

アクセスとその他の情報

蕪栗沼へのアクセスはJR東日本東北本線田尻駅から車で約20分、または東北自動車道古川インターチェンジから約45分です。さらに、蕪栗沼を保全する活動には、特定非営利活動法人蕪栗ぬまっこくらぶの存在があり、クレジットカード「蕪栗カード」を通じて寄付を行う取り組みもありました。

最も新しいトピックでは、1991年には蕪栗沼にちなんだ小惑星も発見されていて、今もなおこの沼の名は広まり続けています。地元では、蕪栗沼のマガンを題材にした童話もあり、地域の自然や歴史に触れられる場所として多くの人々に親しまれています。

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